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ブロードリスニングを技術面から大解剖!「2050年代の東京」に向けた意見募集の舞台裏
東京都が進める「2050年代の東京」を見据えた新しい長期戦略の策定のための意見募集に、ブロードリスニングを活用するプロジェクトが実施され、本日2025年1月31日(金)に、その結果が発表されました。
GovTech東京はこの開発を担い、AIエンジニアの安野貴博さんに技術面からサポートを受けました。今回はブロードリスニングの活用について、主に技術面からふり返ります。
ブロードリスニングで、大量の意見を短期間で分析・可視化
ブロードリスニングとは「広く声を収集し、収集した声をAI技術で分析・可視化する手法」です。
広く社会全体の声を聴き、政策に反映することは行政の基本とされていますが、これまでは意見を集める方法も限られており、さらに収集した声の分析も手作業が中心だったため、多くの時間と労力を要していました。
AIの活用というと、デジタルでの声だけを拾うというイメージがあるかもしれませんが、今回のブロードリスニングでは、XやYouTubeなどのSNSの書き込みに加えて、郵送での意見募集や街角でのヒアリングも対象としています。SNSの特性を活かし、スマホで気軽にコメントできる仕組みを活用しつつ、デジタル媒体を使わない方々の声も丁寧に収集しました。これにより、これまで以上に多くの意見を短期間で集め、分析・可視化(見える化)することが可能になります。
内製化によりスピード感を持った開発ができる
GovTech東京の役割
ブロードリスニングという手法をとるのは、東京都にとって初めての試みであり、世界的にも先進的な取り組みとされています。そのため、技術的にも解決すべき課題が多くありました。
本プロジェクトでは、GovTech東京がデジタル上での声の収集やシステムの構築を担当し、収集したデータの分析・可視化をAIを活用して実現しました。
特に、システムの構築においては、OSS(オープンソースソフトウェア)である Talk to the City を活用し、市民の声を効率的に収集・整理できる仕組みを導入しています。これにより、XやYouTubeといったSNS上の意見だけでなく、様々な手法で収集したデータを統合し、短期間での分析・可視化が可能になりました。
GovTech東京は、このシステムの設計・実装を進めることで、より多くの声を政策に反映できる仕組みづくりを技術面からサポートしました。
2024年11月22日には、ブロードリスニングに知見のある安野 貴博さんにGovTech東京のアドバイザーに就任いただきました。プロジェクトを進めるにあたり、AIを活用した分析における環境設定値の調整方法やプロンプトの構文設計、分析結果の活用方法などについてアドバイスを受けました。
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内製開発により、スピード感のある開発・こまめな改善ができる
GovTech東京は「東京都庁」と「都内62区市町村」のDX推進を加速するために、都庁のデジタルサービス局と協働する組織として2023年に設立されました。2024年10月に発表した中期経営計画の中では内製開発の獲得に注力する方針を発表しています。内製化によりスピード感を持った開発ができ、こまめな改善・チューニングが内部で対応可能なため、プロジェクトの質を高めることができます。
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今回のブロードリスニングのプロジェクトは、GovTech東京が内製開発している事例のひとつです。プロジェクト期間中、東京都の政策企画局と密に連携し、取り組みの精度を高めてきました。
安野さんを交え「内製開発の意義」をテーマに座談会も
GovTech東京のエンジニアが安野さんを囲み、AI活用やエンジニアリングの発展に向けて学びと刺激を得るための社内イベントとして”座談会”も実施しました。カジュアルな雰囲気の中で、システム構成や意見集約の手法、可視化したデータの読み方についての意見が飛び交いました。
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プロジェクトを振り返って
安野さん
行政の方と一緒にこういった規模でのプロジェクトをやったのは初めてのことだったので、正直どうなるか想像もつかないなというところからのスタートでしたが、意外とうまくいったなと。行政の側にエンジニアの担当者がいたことでかなりスピード感をもって、いろんなことに取り組むことができました。例えば、ウイークリーのミーティングの中で「こういう機能があったらいいよね」「こういう風にパラメーター調整したほうがいいよね」という話をしたときに3日後とかにそれが上がってきたりして。そのスピード感は内製で作っているからこそですね。直接作業をしているエンジニアの方と一緒に課題を話し合えることで、全然プロジェクトの進め方が変わると思います。
GovTech東京エンジニア・小林さん
プロジェクトをキックオフして、早い段階でお試し版のデータができました。実際に可視化された声を見てみて、自分たちのデータでこういうものができるんだというのが率直に嬉しかったですね。さらにどんどん声が集まって、詳細になっていく様子をチームで見ながらどういうプロンプトを書くかディスカッションし、改善する。スピード感をもってやれたのは良かったと思います。
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より多くの意見を広範囲に収集し、多様な視点を反映しやすい仕組み
今回の「ブロードリスニング」を活用した意見募集は、技術的観点から従来の方法と比較すると以下の点で効果的だったと考えています。
1.多様な意見収集手段で都民の声を集める
今回の意見募集は、Googleフォーム、Xでの投稿、YouTubeへのコメント、Eメール、郵送で行われました。加えて、上野動物園等での街頭インタビューも行いました。
デジタル媒体を活用することで、普段行政との接点が少ない方からの意見も収集でき、特定の視点に偏らず、社会に存在する多様な声を集めることができました。
2.膨大な声をデジタルの力で素早く整理
様々な手段で収集した声は、分析しやすいデータ形式へと整理します。その後、OSSツールであるTalk to the Cityを活用し、意見を分析し、内容が類似するものをグループ(クラスター)化し、要約(サマリ)を生成します。このプロセスにより、多様な意見を効率的に整理し、視覚的に分かりやすくすることができます。
3.収集した声を分析・可視化し、透明性も担保
クラスター分析では、収集した意見を色分けして視覚化します。色自体には特定の意味はありませんが、位置関係によって関連性の高いクラスター同士が近くに配置されます。また、各クラスターのタイトルは、AIが意見の内容を簡潔に要約するよう設定しています。
また、集めた意見の中で、誹謗中傷の内容が含まれる等不適切なものは分析対象から除外をするよう、AIへの指示も行いました。今回のプロジェクトでは、意見の分析・可視化のためにどんなプロンプト(AIへの指示文)を作成したかを、外から誰でも確認できるように「付録」としてすべてHPに記載しています。これにより、AIによる意見抽出の透明性を確保し、恣意的な解釈や偏りを防ぐ仕組みを構築しました 。
わたしたちは「情報技術で行政の今を変える、首都から未来を変える」をビジョンに掲げています。今回のプロジェクトで得た技術的な知見についてもオープンに共有し、多くの自治体の皆さまにも役立てていただくことで、行政DXを推進できたらと思っています。
GovTech東京の内製開発の思想はこちらの記事もご覧ください。
また、GovTech東京では、ともに行政のDX化という大きな課題にともに取り組んでくれる新たな仲間を募集しています!カジュアル面談も実施中です。
そして2月13日・14日に開催される「Developers Summit2025」には、CTOの井原が登壇します。ブースも出展しますので、是非お立ち寄りください。