Govtechという巨大な山に挑む、GovTech東京の組織哲学
🎄🎅☃️メリークリスマス!☃️🎅🎄GovTech東京CTOの井原です。 こちらの記事は、GovTech東京アドベントカレンダーの24日目にあたります。明日が最終日とのことで、少し寂しさを感じつつ、GovTech東京(以下、GTT)の取り組みや、私自身の想いを共有させていただきます。
GTTという多様な専門性が集う環境
GTTは、東京都をはじめとする行政職員と民間から来たメンバーが同じ組織で働く、とても珍しい環境です。行政運営や制度設計に通じた行政職員の方々、サービス開発やデザインの知見を持つエンジニアやデザイナー、さらには社会的な課題の解決に熱意を注ぐ企画者など、多種多様なバックグラウンドを持つ人々が集まっています。
このような「公と民」の融合によって、新しいアイデアが自然と生まれやすくなるのはGTTならではの強みです。
まだ一緒に仕事を始めたばかりのメンバー同士でも、互いの知見を共有し合ううちに「こういう手法はどうだろう」「そもそもこのプロセス自体を変えられないかな」といった発想が飛び交う光景をよく目にします。
行政と民間、それぞれが培ってきた知識やスキルを活かし合いながら、都市サービスや行政業務をデジタルでより良い形へと進化させたい――その思いが、GTTの活動全体を支えています。
こうした多様な専門性の必要性を強く実感したきっかけの一つとして、私自身が2024年1月1日に石川県能登地方で地震に遭遇した経験があります。
能登半島での被災で改めて感じた「情報インフラ」の大切さ
私は2024年1月1日に石川県能登地方で大きな地震に遭遇し、避難所で数日間を過ごす経験をしたことが、GTTで仕事に取り組むことになった大きな転機でした。まずは人命救助やライフラインの復旧が最優先なのは言うまでもありませんが、同時に痛感したのは「通信や情報が断たれたときに感じる先の見えなさ」でした。
自治体のホームページがダウンしてしまい、必要な一次情報にアクセスできないもどかしさがありましたし、SNSを使って情報を探そうにも通信はありません。頼れるのは電池で動くラジオと救援に来た人たちの話だけでした。
あのときの体験を振り返ると、行政が発信するデジタル情報の重要性が改めて際立ちます。もちろん、災害時にはさまざまな優先度があることは承知していますが、「デジタルインフラを強化し、確実に情報を届けられる状態をつくりたい」という思いを抱くようになりました。何より、今まさにその情報を必要としているユーザーがいることを身をもって知りました。
技術より大事にしたい利用者目線
私たちが日々の業務で意識しているのは、優れた技術そのものではなく、それを私たちが使って価値を届けるユーザーのこと、「誰が、どのように使うか」を常に考えることです。行政サービスに触れる方は実に多様で、デジタルに詳しくない方や高齢の方も少なくありません。どれだけ先端技術を採用しても、「使いづらい」「分かりにくい」と感じられれば、その価値は半減してしまいます。
そこで大切なのが、ユーザーファーストという考え方です。サービスやシステムの導線を分かりやすく整備する、アクセシビリティに配慮する、操作ステップをなるべく少なくする――こうした当たり前のようで見落としがちなポイントを念入りに押さえることで、より多くの方に活用してもらえる可能性が広がるはずです。行政サービスだからこそ、誰一人取り残されない仕組みづくりを心がけたいと思っています。
組織の力を最大化するためのオープン&フラット
GTTでは「オープン&フラット」という価値観を大切にしています。ともすれば、「行政は縦割り」「組織のヒエラルキーが厳しい」というイメージが先行しがちですが、私たちはそうした枠を少しでも和らげたいと考えています。
オープン
行政側の制度・法令への知見も、民間出身者が持ち込むプロダクト開発やデザイン手法も、互いに積極的に共有する。
わからない分野は素直に相手に尋ね、そこで得た学びを組織全体で共有することで、スムーズなチームワークを可能にする。
フラット
「誰が言ったか」よりも「何を言ったか」を大事にする。
発言やアイデアが肩書きによって左右されないよう、極力フラットな場をつくることで、多様な視点や経験を活かす。
こうした姿勢を実践すると、部署や立場の違いを超えて意見が飛び交い、思わぬ形でプロジェクトが加速する瞬間に立ち会うことがあります。行政と民間の融合という大きなチャレンジを進めるうえで、オープン&フラットは私たちの重要な武器になり得ると感じています。
巨大な山登りに挑むための信頼と挑戦
行政サービスや都市機能を大きく変える「Govtech」という領域は、とてつもなく巨大な山を登るような挑戦です。法令や条例、既存のオペレーションなど、クリアすべき要素は多岐にわたりますし、ひとつの決定を下すにも多くのステークホルダーとの調整が必要です。道は決して平坦ではありませんが、それでも私たちは「信頼と挑戦」を鍵に前進していこうと考えています。
信頼
互いの専門性やバックグラウンドを尊重し合うことで、難題に直面しても一緒に解決策を模索できる関係を築く。
行政職員、エンジニア、企画者など、多様な立場の人たちが「このメンバーとなら乗り越えられるかもしれない」と思える安心感を育む。
挑戦
レガシーシステムや長年の慣習が根付いた行政の世界であっても、必要であれば構造的に見直し、新しい仕組みを導入する姿勢を貫く。
実際に動かしてみて初めてわかる課題も多く、失敗を恐れず試し続けることが、大きな変化への第一歩になると信じる。
この「信頼と挑戦」の姿勢があるからこそ、私たちは巨大な山に対しても一歩一歩確実に足を進め、いつかは頂にたどり着けるのではないか、と前向きに歩みを続けられます。
未来へ向けて
GTTの道のりは、まだまだ途中です。私自身、経験不足を痛感する場面が多々ありますが、多様なメンバーのサポートや学び合いの場を通じて、日々少しずつですが前進している感覚があります。
日本最大の自治体である東京都と都内62の区市町村のデジタル化を推進するという、まるで巨大な山を登るようなスケールの取り組みだからこそ、乗り越えたときの達成感は計り知れないだろうと感じます。
私たちは、技術や仕組みを駆使して複雑な問題に向き合う一方、「ユーザーファースト」の姿勢と「オープン&フラット」の文化を武器に、誰もが使いやすく、誰もが参加しやすい行政サービスを目指しています。困難を乗り越えるたびに、自分たちの視野や知識も広がっていくのを実感しますし、それがさらに挑戦への意欲をかきたててくれるのです。
こうした取り組みを通じて、私たちは『誰もが安心して利用できる行政サービス』を実現し、東京都の未来像を変えていきたいと考えています。
アドベントカレンダーはいよいよ明日が最終日ですが、GTTの挑戦はここからが本番です。GTTの公式X(@GovTechTokyo)では最新の取り組みを発信していますので、今後もGTTの取り組みを見守っていただき、「こんな課題があるのでは?」「こういうアイデアはどうでしょう」など、気軽にフォローやコメントをいただければ幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。メリークリスマス、そして皆さまが良い年末を迎えられますように。
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