東京都のデジタルサービス品質向上を目指し「事業運用の型化」を推進する理由
GovTech東京は、東京都庁と都内62区市町村のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するために2023年に設立されました。
東京都は行政サービスの質を高め、住民の暮らしの質を向上することを目指しており都政のクオリティ向上を目標に、都庁各局をはじめ都と連携する政策連携団体への技術支援を行っているのが都政DXグループです。
都政DXグループでは、東京都で実施している企画などの上流工程の支援や要件定義、プロジェクトの進捗管理を通じて、事業の成功に向けて強力にサポートをしています。
日々の業務の中から見えてきた行政サービスの品質向上につながるノウハウやアイディアをnoteにて、連載形式でご紹介しています。
今回は私たち都政DXグループが東京都との事業を技術的にサポートする際に、安定的な成果が出るよう行っている「事業運用の型化」について紹介します。
こんにちは。都政DXグループの渡邊 玲央(わたなべ れお)と申します。
私は2019年まで東京消防庁に勤務し、ポンプ隊長などの職務に従事してきました。その後、自治体向けサービスを提供するスタートアップに転職し、主にプロジェクトマネージャーとして、お客様との要件整理・ソフトウェア開発・チームビルディングなど、デジタルサービス提供者側で様々な事柄を経験してきました。
2024年1月よりGovTech東京で再び行政の仕事に携わっています。入職の経緯などはこちらでも語っているので、ご覧ください。
行政サービスの品質を向上させるため、常に改善を続ける
GovTech東京は、2027年までに成し遂げたい目標の一つとして、サービス品質の変革「ダメなサービスを撲滅し、ダメなサービスを放置しない」を徹底することを掲げています。
この背景には、東京都のデジタルサービスに対する利用者満足度の低さがあります。東京都の全行政手続きデジタル化率は、2020年9月の5%から2023年度には70%まで向上しました。
その一方で、デジタル化された行政手続きで「満足」と回答した人の割合は東京都は26%と海外5都市が66%に対し、低い水準にあります。
この目標を達成するためにはまず、東京都が提供するデジタルサービスの「当たり前品質」(満たされないと不満につながるもの、例えば自動車の安全性やホテルの部屋の清潔さ)を担保できる事業プロセスの標準化を行う必要があると考え、私たちは2023年度から「事業運用の型化」に取り組んでいます。
「当たり前品質」を担保するための取り組み
「事業運用の型化」とは、「当たり前品質」以上のサービスを提供できるようにするために、以下の2点を中心として、事業の各工程で気にしておく観点を標準化することです。
1.東京都のデジタルサービスに関する事業を推進する各工程で実施すべきことの明確化
事業を進めるにあたり何を実施すればよいかわかるようにするため、都が提供するデジタルサービスの各工程で「実施すべきこと」を一覧にし、工程ごとに適切に実施されているか「チェックリスト」を作成しています。
2.都デジタルサービスの全体的な進め方や重要なポイント
実施すべきことをいつ、誰が、なぜ、どうやって実施すればよいかわかるようにするため、実施すべきことの実施者、実施タイミング、実施理由、実施方法等を記載した資料を作成しています。本資料を活用することで担当者が進むべき道のりを迷わずに済む効果があると考えています。
昨年度より、関係者から高いニーズがあった開発工程の「開発のポイント」資料と「リリースチェックリスト」を作成しました。本年度は開発工程だけでなく、デジタルサービス全ての工程に対して「事業運用の型化」資料の作成に取り組んでいます。
「事業運用の型化」の手ごたえ
作成が一旦完了した「事業運用の型化」資料は、都政DXグループ内で技術支援や進捗管理を行う際に活用しています。
また、関係者の方々へ共有し、実際の技術支援を通していただいたフィードバックを踏まえながら、内容のブラッシュアップを進めています。
例えば、設計段階で機能面や運用面の要件に抜け漏れがないか、テスト段階で実施すべきテスト項目の抜け漏れがないかの確認に活用しています。実際に資料を活用したメンバーからは、「抜け漏れがなくなった」「同じような資料を作る手間が省けた」「支援先と早期に認識を合わせることができた」などの声をもらっています。
おわりに
今回は、都庁の事業が安定して成果が出るようにするための取り組み「事業運用の型化」について書きました。私自身、支援させていただいた方々から「支援助かりました。ありがとうございました。」と言っていただくことも多く、とても仕事のやりがいを感じます。
しかし、人だけに頼った支援では、支援できる範囲や数、担保できる支援の質にどうしても限界があります。「事業運用の型化」を進めることで、「当たり前品質」のサービスが担保できるしくみを関係者の皆様と共に作ることができれば、と考えています。
私たち都政DXグループは、各現場の職員の方々と協力しながら、都政のサービス品質向上に努めています。今後もnoteにて、都政のDX推進をテーマに紹介していきますので、ご注目ください。
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