2024年1月、GovTech東京に入社した多彩すぎるメンバーを紹介します
2023年9月に事業を開始した、官民が協働して行政のDXを推進するプラットフォーム「一般財団法人GovTech(ガブテック)東京」には、毎月様々なバックグラウンドを持つ新たな仲間が参画しています。
今回は、2024年1月に入社した11名の中からエキスパート職の4人に集まってもらい、GovTech東京への転職に至った経緯や決め手、現在の仕事内容、それぞれが実現したい行政DXの未来について話してもらいました。
宮坂さんのビジョンと覚悟、GovTech東京ならではの仕事に惹かれて
── まずは、簡単に自己紹介をお願いします。
小木:私は国会議員の政策担当秘書を務めたのち、外資の民間企業に転じました。AWSパブリックセクターの統括本部長補佐、Microsoftガバメント・エキスパート本部本部長を経て、2024年1月からGovTech東京のデジタルサービス本部 官民共創グループに参画しています。
秘書の頃は業界団体からの陳情を拝聴したり、省庁とディスカッションをする機会が多数あり、民間企業に転じてからは自治体や官公庁に事業開発として企画を持ち込む立場を経験しました。官との接点はありましたが、GovTech東京に入って“テーブルの向こう側”に来たような感覚を持っています。
児玉:私はテクノロジー本部 テクニカルグループに所属しています。大学卒業後、アプリケーションシステムを開発するSIerに入社し、システム開発をイチから学びました。その後、セキュリティ関連のパッケージソフトを開発・販売している会社に転職し、アプリケーション・エンジニアとして開発を担当。直近の2年ほどは開発部門の統括責任者として、組織形成や採用など含め幅広くリードする役割を担いました。
渡邊:デジタルサービス本部 都庁DXグループの渡邊です。私は最初の職場である東京消防庁に14年間お世話になりました。ポンプ隊長など現場での仕事が多く、火災が起これば出場し、消火に従事していました。情報通信課でベンダーとやり取りした経験もあります。
東京消防庁に勤務する傍ら、学生時代に力を入れていたボクシングにも取り組んでいました。ボクシング引退後に一念発起してプログラミングを学び、力量を試したくなったため、ハッカソンに出場して賞を獲得したりしていました。東京消防庁の仕事とは違う形で世の中にインパクトを与えられるんじゃないかと思い、自ら会社を立ち上げたり、スタートアップに転職してプロジェクトマネージャーを務めたりしました。GovTech東京に関するとある記事を読んだことがきっかけで転職し、現在に至ります。
松井:私は1社目の製薬会社に創薬研究の研究者として入社し、マーケティングや新人研修担当、MRの支援を経験したのちにDXを推進するチームに配属されました。そのときの経験を通じてデザインを取り入れたDX推進をしたいと思い大手IT企業グループでデザイン経営やDXビジネスをリードする役割を担うデザイン組織に転職しました。転職先では地域課題の解決に取り組むソーシャルデザイナーとして、佐渡島と淡路島でプロジェクトを担当しました。プロジェクトを推進する中で、地域課題の本質的な解決に取り組みたい思いが強くなっていたタイミングでGovTech東京が立ち上がることを知り、転職を決意しました。現在はデジタルサービス本部 区市町村DXグループに所属しています。
── GovTech東京に入ろうと決めた、その決め手は何だったのでしょうか。
小木: 東京都副知事であり、GovTech東京 理事長の宮坂さんと一緒に仕事をしたいと思ったのが理由のひとつです。GovTech東京が発足する前、構想が報道された段階から半官半民のユニークな組織ということで注目していました。宮坂さんとは当時からX(旧Twitter)でお互いにリポストし合ったり、理事予定者のメンバーもおもしろそうだと思いながら見ていました。
もうひとつの理由は、再度“公”の仕事をしたいと思っていたからです。一般論としてのリボルビングドア(官と民を行き来するキャリア)の話はここ数年盛り上がっていますが、実際にドアを回している組織は今までなかったと思います。GovTech東京には任期があり、原則5年間しかいることができません。皆5年後にはどこか違う場所にいるわけです。官なのか民なのか。勝手に回るドアの中にいる持ち時間の中でどう活躍するのか。同じ問題意識を持ったメンバーばかりが集まっているのはおもしろい。私はそう感じたので、迷わず入社しました。
リボルビングドアはまだ確立期なので、回す組織と意志を持った人間が必要です。宮坂さんは「人生をまるまる賭けろとは言いません。数年間をこっち側で過ごしてみませんか」という言い方をしています。私は幕末から明治、大正の政治の話が好きで歴史の本をよく読んでいます。当時は官民の人材の流通、マネジメントがダイナミズムをもって当たり前のように行われていました。令和なりのリボルビングドアがあるはずだという仮説を持っていて、幸い身体も元気なので飛び込みました。
児玉:私は前職からですが、プライベートで学童保育の運営に関わるNPOで理事を務めています。活動の中で行政に関わる機会があり、自主的に学んでいました。その流れで、GovTech東京の理事が話している映像を見て、今までの行政とは違う動きをしていることに関心を持ちました。
実は転職する気はあまりないまま、GovTech東京がどのようなプロセスを通じて「行政×DX」を果たそうとしているのかを聞いてみようと思って応募しました。結果的に内定をいただけて、思い切って新しい環境に身を投じて自分自身をアップデートしよう、チャレンジしようと決断した形です。また面接でお会いした方々が皆、そのような私の話に共感してくださいました。そういう人たちと一緒に仕事ができる機会もなかなかないだろうと感じたことも決め手のひとつです。
渡邊:東京消防庁ではできなかった仕事がGovTech東京ならできると思ったことが決め手です。「情報技術で行政の今を変える、首都の未来を変える」というビジョンへの宮坂さんの本気度、コミットメントに惹かれました。
松井:私もCareer Meetupでの宮坂さんの話に惹かれました。すでにさまざまな挑戦を重ねてきた宮坂さんがトップとして、GovTech東京で新たな挑戦を始める。これから人を集める。そういう話を聞いて、チャレンジングなトップがいる組織で働いてみたいと思い転職を決めました。
GovTech東京 採用イベント|GovTech東京 Career Meetup 「情報技術で行政の今を変える、首都の未来を変える」
「オープン&フラットは本当でした。」立ち上げ期だからこそより大事な、話しかけやすい雰囲気
── いざ入社してみて、GovTech東京はどんな組織ですか?
小木:理事との距離が非常に近いです。私のレポートラインの畑中理事は、神奈川県医療危機対策統括官として新型コロナウイルス対策にあたった経験を持っていて、現在は厚生労働省やこども家庭庁の参与も務めています。そういう中でGovTech東京にも時間を割いていて、出勤日ではない日でもオフィスに立ち寄ってメンバーとのフリーディスカッションをしていたりします。私も定期的な1on1(面談)の時間をもらっていて、毎回、当初設定していたお題とは別の方向に話が膨らんでいって勉強になることが多いです。各務理事は「小木さんの知っている会社の人が来るから一緒に話を聞こう」と声をかけてくれますし、「コミュニケーションは、長さよりも頻度」が持説の宮坂さんがお菓子を配りながらオフィス内を歩いていたりします。理事たちもGovTech東京がスタートアップであることを強く意識していて、意図的に時間を投資しているのだと感じます。
もうひとつ、いい意味で驚いたのが都庁から派遣されているメンバーの行政マンとしての優秀さです。「スピード重視で、まずは60点取ろう」という民間から来た人間としては、「レク*」の準備の入念さや資料へのこだわりには刺激を受けます。このように一緒に働く理事、メンバーが魅力的であることが入ってみて一番強く感じたことです。
*レク:重要案件について上層部に報告相談すること
児玉:組織としてゼロから考えて、創っていきましょうという状況の中で、一人ひとりがこれまで培ってきた経験やスキルをGovTech東京の中でどう活かすのか。どうすれば仕事がうまく回り、DXを実現できるのか。オープン&フラットに意見を出し合い、皆がいいねと思えばやってみようという空気があります。
渡邊:私もオープンでフラットだと、仕事をしていて思います。話しやすい雰囲気を組織として意図的に作っていると感じます。立ち上げ期で、良くも悪くもカオスな状態なので聞きたいことが多々ある中で、話しかけやすい雰囲気なのは仕事が進めやすくなるので助かっています。
GovTech東京の仕事は登山?それぞれの知見を活かすために必要な装備とは
── ご入社から2ヶ月程ですが、みなさんの仕事内容について教えてください。
小木:さまざまな団体・企業が官民共創と言っています。しかし、それぞれ中身はバラバラなので、正解を探すのでなくGovTech東京の考える「理想の官民共創とは」を定義し、打ち出す必要性を感じています。官民共創が求められている理由のひとつはデジタル人材不足です。問題が叫ばれるようになって久しいのに解決していませんし、デジタル人材を急に増やすことも難しい。つまり共創の仕方を考えるしかありません。例えばネットワークがなかったところにつながりをつくったり、複数回線にしたり、つないだものを太くしたり活発化させる必要があります。この国のパブリック・リソース・マネジメントを合理化していくことが官民共創のひとつのあり方なのではないかという仮説を持っています。GovTech東京としてどのような施策を打っていくのかを理事たちと話しながら自由に企画立案できる立場なので、やりがいがあり、参画して本当に良かったと感じています。
ここ数カ月は、官民共創のプレーヤーたちがどのような課題やニーズを持っているのかを重点的にヒアリングし、ディスカッションをしていました。例えば、東京都が実施している「都知事杯オープンデータ・ハッカソン」をアップデートする際に、都のデジタルサービス局とGovTech東京が一緒になって施策を具現化しました。その際にシビックテック・コミュニティのいくつかの団体に欲しい施策をヒアリングして、実際に落とし込んでいます。
官民共創の取組は東京以外でも進んでいます。例えば愛媛県は基礎自治体との取組がうまくいっているので、人材確保グループ、官民共創グループ、区市町村DXグループの3グループ共同で視察に行きました。膨大な量のヒアリングアジェンダを用意し、できるだけ多くの学びをGovTech東京に持ち帰れるよう取り組みました。今後数年間で国内だけでなく海外の先進的な自治体からも知見を取り入れることができるよう企画立案を進めています。
児玉:テクニカルグループのミッションは、技術的な観点からありとあらゆる支援を行うことです。具体的にどのようなアウトプット、成果を出していくのか“そもそも”のところから考えることができる段階なので、やりがいを感じています。現在は、子どもDXでの保活ワンストッププロジェクトに携わっていますが、ダイレクトに都民の生活を便利にしますし、都庁で最前線に立っている各局の方々と一緒に仕事をする機会が増えつつあり、やりがいを見出しつつあります。都庁各局が実現したいサービスを開発する際に、実現性や技術的に用いるべきものをUX含めてアドバイスし、都民に対して意味のあるデジタルサービスを提供していくことを念頭に置きながら、GovTech東京として主体的にサービスやシステムを作ってリリースしていきたいという目標も見えつつあります。
渡邊:都庁DXグループは、東京都 デジタルサービス局とバディを組んで都庁各局の支援にあたっています。私個人は、6割程度の時間を各局支援に使い、残り4割の時間でグループ内の組織的な仕組み作りに取り組んでいます。「渡邊さん、サポートしてくれてありがとう」と言われることもうれしく、やりがいを感じていますが、組織全体でパフォーマンスを上げていくことを重要視しています。児玉さんが触れたように、GovTech東京側で自ら手を動かすことにも将来的に取り組みたいと考えています。
松井:私は、民間からGovTech東京に転職を考えている方に向けて、現実的な話をしたいと思います。入社後最も驚いたことはステークホルダーの多さでした。区市町村DXグループでは、学童クラブの電子申請の伴走支援に取り組んでいて、すでにローンチしている自治体も複数あります。GovTech東京のメンバーや東京都からの派遣職員、区市町村のDXやICTの担当/推進部署、担当課、現場の方々など多くの人が関わるので、一人ひとりの仕事の仕方やそれ以前の取組などをキャッチアップすることが、重要だと認識しました。情報収集する力の必要性を痛感しています。法律や制度について知っておく必要もあります。民間で培ってきたスキルや経験は活かしつつ、足りない情報をチームの行政出身者の力も借りて集められる人が活躍できると思います。
小木:実は同じようなことで苦労したので、松井さんの話に共感できます。仕事を進める上で、誰が何をできるのか、どういう人がどこにいるのかを把握することが大事です。ただ東京都という大きすぎる組織の中で仕事をしていくので、一人ひとりに聞いていくわけにもいきません。現在、GovTech東京はメンバー全員の自己紹介ページをNotionで作成していますが、それだけではわからないことも多いので、私はちょっと楽をしてみました。
都庁とGovTech東京の組織人事情報を一覧化した“ジャバラ”と呼ばれているものがあります。私は入社後早々に、都庁からの派遣職員に30分時間をもらって、ジャバラを見ながら組織と人の解説をしてもらいました。「このグループはこういうことをしている。この部長はこういう仕事をしていてパーソナリティはこうだ」と。それが現在、実務で役立っています。ちなみに、解説してもらっていたところにたまたま宮坂さんが通りかかって「何をやっているの?」とフランクに声をかけてくれたので説明したところ、「自分も都庁に来たときに“ジャバラ”を見て都庁の組織について勉強したよ」とおっしゃっていました。GovTech東京ではよく事業を登山に喩えるのですが、そのための装備として、人事情報や人間関係の把握は大事だと実感しています。
原則5年の任期と、だからこそ見えるもの
── 皆さんが思い描かれている、実現したい行政DXの未来について教えてください。
児玉:「東京都で使われているサービスやシステムに関することをすべて理解する」という目標を立てています。難しい目標ですが、広く浅くではなく中身について深く知り、当然、行政のプロセスも理解する。その上で、先回りして技術的な支援ができるようになりたいです。さらに欲を言うと、GovTech東京主体でソリューションを形にできたらおもしろそうだと考えています。
渡邊:まず個人として、しっかりと支援できるレベルに自らを高めていくことを追求していて、プロジェクトマネージャーとしてキャリアを積んでいきたいと考えています。GovTech東京全体やグループの視点でいうと、業務がうまく回る仕組み作りに取り組んでいきたいです。長期的には、利用者に寄り添ったシステムを作るという自分の信念を大事にしながら、情報技術で行政の今を変えることに貢献することを目指しています。
(任期が終わる)5年後についてはまだ具体的なイメージがわいていませんが、私が過去、行政の仕事を離れた後に多くの方に支援いただいたように、挑戦する人や挑戦した結果困っている人の手助けをしたいです。そういうことを考えながら日々研鑽しています。
松井:短期的には、まず東京都内の区市町村のデジタル化支援をしていきたいです。もうひとつ、実は、GovTech東京に入ってから湧き上がってきた想いがあります。「あらゆる人々の差をなくしたい」というのが、私の志なのですが、それを実現するには、制度改革も必要であるということを認識することができ、それだけでも自分の枠が広がっていると感じています。民間から転職した私を通じて、行政の取り組みについて、もっと知ってもらいたいと思いが強くなりました。そのためにも、良い活動については発信していきたいですね。
小木:ユニークな組織だなと面接の段階で感じていました。「小木さんは5年後、辞めたらどうするの?」と聞かれたんです。そのときは「何年いるかわかりませんが、経験を深めたり、人材としての価値を高められるように精進します」と濁した記憶があります。GAFAなどの外資系企業に戻るのか、あるいはさらに公共の分野で頑張るのか。いずれにしてもキーワードはマネジメント、日本語でいうと経営です。官民共創グループでやっていることはGovTech業界のリソースをどう最適化するか、最大限活用するか。つまりパブリック・リソース・マネジメントの観点の色が濃いと考えています。まずはそこに取り組んでいきます。
最後に個人的なエピソードを紹介させてください。GovTech東京で働き始めてから、地域への愛着が深まりました。ちょっとした時間ができると、地域にある小さな銭湯や郷土博物館、図書館に行くようになりました。広い意味でのパブリックリソースに興味がわき、自分の意識の方向や時間の使い方が変わったと感じています。リボルビングドアのポジティブな効果のひとつだと思っていて、GovTech東京にいる間に自分がどう変わっていくのか楽しみにしています。
※ 記載内容は2024年3月時点のものです