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『プロジェクト型伴走サポート<Webサイトの課題抽出・改善>』レポート(後編)|区市町村の広報DX最前線!ユーザーの利便性(UX)向上のために自治体が取り組むべきこと

GovTech(ガブテック)東京では、2023年10月から2024年3月までの約5か月間、「プロジェクト型伴走サポート<Webサイトの課題抽出・改善>」 を実施しました。本伴走サポートでは、港区、北区、練馬区、八王子市、青梅市、町田市、日野市、東久留米市、新島村の9自治体が参加し、GovTech東京がWebアクセス解析の基礎知識からコンテンツの改善、施策の実行までを伴走支援しました。

このnote(後編)では、3月18日に実施した情報共有会にご参加いただいた港区、北区、青梅市、日野市の4自治体に、このプロジェクトに参加した理由や取り組んだ施策内容、成果についてインタビューした内容をお伝えします。


※本プロジェクトが立ち上がった経緯と取組、成果について、GovTech東京の桑本に聞いた(前編)はこちら

東京都が設立した行政DXの専門組織だから安心

今回のプログラムに参加した背景や施策の内容、得られた学びについて、情報共有会にご参加いただいた港区、北区、青梅市、日野市の4自治体の参加者にお話を伺いました。

── 初めに、今回のプログラムに参加した背景を教えてください。

赤井氏(北区):情報システムの管理運用などを管轄している情報政策課から本プロジェクトについて案内をもらい、興味を持ちました。GovTech東京は、東京都が設立した行政DXの専門組織であることから安心感もありました。

北区の広報課では、複数のSNSを運用しています。各SNS内に分析機能が備わっているため、数値結果を把握することは可能でしたが、フォーマットや指標が統一されていないがゆえに当時正しい効果測定には至りませんでした。また、北区のホームページに関しては、令和6年度末を目途にリニューアルを予定しており、基礎知識の習得だけでなく、ホームページリニューアル時のヒントにしたいと思っていました。

大楠氏(港区):港区でも、令和6年度に向けてホームページのリニューアル作業に着手しており、ホームページの分析方法や優れたUI/UXについて学んで参考にしたいと思い、参加を決めました。

石黒氏(日野市):日野市では、令和5年度にホームページのアクセス解析ツールをGA4に移行したのですが、操作方法や機能について十分に理解できておらず、うまく活用しきれていませんでした。本プロジェクトに参加すれば、GA4を使ったホームページの分析方法をレクチャーを受けられると知り、応募しました。

小昏氏(青梅市):かねてからホームページやSNSなどで発信して終わりではなく、効果測定をしてふり返ることが大切だと理解はしていましたが、日々の業務に追われる中で取り掛かることができずにいました。今回のサポートのように、レクチャーだけでなく施策の実践にも伴走してくれるのであれば、青梅市でも始められるかもしれないと思いました。

Webサイトの課題抽出・改善だけじゃない。ユーザーの利便性(UX)向上のために自治体が取り組むべきこと

── 実際に各自治体にて取り組まれた施策について、詳しく教えてください。

赤井氏(北区):北区はURLパラメーターの導入と、Googleビジネスプロフィールの整備に取り組みました。

まずURLパラメーターの導入では、各SNS用にURLパラメーターを生成し、SNS担当者に共有して2024年2月から順次対応しました。導入により、各SNSからどの程度、北区のホームページにアクセスされているか把握できるようになりました。特に、給付金の案内や北区のコミュニティバス「Kバス」 のダイヤ改正についての案内など、区民の日常生活に直接的に影響するような内容の投稿ほど多く閲覧されていることがわかりました。また、区が抱える課題について意見・要望をお聞きする「区政モニター制度」では、Facebookやメールマガジンから情報を閲覧している高齢者層が多いことが分かりました。今後もデータを蓄積し、分析結果に基づいて、投稿内容の見直しや投稿媒体の再検討を実施できればと思います。

そしてGoogleビジネスプロフィールの登録・施設情報の最適化は、庁舎などを検索されるユーザーの利便性向上、北区ホームページや公式SNSのアクセス数増加を目的に着手しました。公共施設の場合、各施設で同じ電話番号を使用している場合があるためオーナー認証時に重複登録とみなされ、電話番号認証がなかなか通らず苦労もしました。認証が通り、対応可能となった区の施設に関しては、施設の外観写真のアップロードや営業時間、SNS情報を追加するなど改善することができました。

大楠氏(港区):ホームページのリニューアル前にすぐに着手できることとして、表示回数やエンゲージメント率を参考に、港区ホームページ内の「職員採用情報ページ」「粗大ごみの出し方」「Q&Aページ『Q&A 港区内にある商店街を知りたい』」の3ページについて、UXライティングによるゴールを設定し、文章構成の見直しや画像・リンクの追加、テキスト情報の補足・修正などを行いました。

サイトの見栄えを改善したことで、「職員採用情報ページ」では、改善前後の3週間でユーザーエンゲージメント率が上昇。「粗大ごみの出し方」のページでは、改善前後の1週間でセッション数が大幅に伸長しました。

石黒氏(日野市):日野市では、2つの取組を実施しています。ひとつは、市の給付金に関する申請手続きページに目次をつけ、ページの構成がひと目で分かるように改善。さらに、目次の各見出しにリンクを貼ったことで、目的の情報にすぐにたどり着けるようにしました。これによって読了率が改善し、より分かりやすくなったと感じています。また、閲覧者が必要な情報にスムーズにアクセスでき、電話や窓口での問い合わせ数を削減することを目的に、UXライティングにも取り組みました。

大谷氏(日野市):もうひとつの取組は、URLパラメーターを使ったLINE配信の効果測定です。日野市では公式LINEを使って情報発信を行っており、LINEの投稿からの日野市ホームページへの流入数を集計できるようにしました。バナーを使用するなど目を引くように配信内容を工夫したところ、以前よりもホームページへのアクセス数が増加しました。

2つの取り組みを通して、他にもエンゲージメント率や読了率など、ホームページ内の動きもデータで可視化できるようになりました。この経験を他の施策にも活かしていきたいです。

小昏氏(青梅市):青梅市では、2つの施策を実施しています。ひとつは、URLパラメーターを活用したSNSの効果測定です。青梅市はLINEとX(旧Twitter)で情報発信をしており、URLパラメーターを活用してどういった投稿に市民の方が反応しているか確認しました。

市民の関心がどこにあるのかよくわかり、例えばプロジェクト期間中に、健康づくりを応援するサービス「おうめヘルス&ウォークアプリ『うめPON』 」をスタートしたのですが、具体的な数値を通して市民の方から大きな反響があることがわかりました。

もうひとつの施策は、Googleビジネスプロフィールの登録・最適化です。公共施設のGoogleビジネスプロフィールを市で管理できるよう設定しました。初めての試みでしたが、一歩前に進むことができたと思います。データを有効活用すべく、広報係とDX推進課で月に1回の定例会を開き、データから得られる示唆などについて話し合っています。

得られた学びを日々の業務に応用し、さらなる実践へ

── GovTech東京によるサポートを受けられて、いかがでしたか?

赤井氏(北区):レクチャーを受けるだけでなく、実際に北区に来ていただき、ホームページのアクセス解析をしていただきました。データをもとに様々なフィードバックをいただき、今の問題点や取り組むべき課題を把握できて非常に参考になりました。サポートは終了してしまいますが、今後も自分たちで改善したいですし、学んだことを継続的に実践していきたいです。

大楠氏(港区):UXライティングやページの分析など一般的な知識が身についたことはもちろん、実際に港区のホームページについて、GovTech東京の方々と共に改善方法をご相談したり、アドバイスをいただいたりと、具体的な施策に落とし込むことができた点が特によかったです。

石黒氏(日野市):ホームページのアクセス解析に関して、初めは専門的な内容が多いのかなと不安に思っていましたが、順番に噛み砕いて説明いただいたので、すごくわかりやすかったです。実際のホームページに即したアドバイスも多く、すぐに実践できそうだと感じました。
また、わからない点があるとすぐに相談でき、たくさんの参考情報も共有いただいたので、すごくありがたかったです。

小昏氏(青梅市):今回の取組は、日々の業務では後回しになりがちでしたが、やらざるを得ない環境に身を置き、手厚いサポートを受けながら取り組んだことで背中を押されました。非常に良い機会になりました。

同じように日々の業務に追われてなかなか一歩踏み出すことができていない区市町村の方にとっても、本プロジェクトに参加することは非常に良い機会になるのではないかと感じました

貴重なWebサイトリニューアルのタイミングを、UX向上の絶好の機会に

── 今回の取組を踏まえて、GovTech東京として、そして桑本さんとしての今後の展望をお聞かせください。

桑本:引き続き、様々な自治体サイトや観光・子育てといった関連WebサイトにおけるUX向上を推進していきたいです。例えば、Webサイトですが、多くの自治体が実施するフルリニューアルは、5年や10年のサイクルです。その企画設計や調達においてしっかりUXを意識できるかで、リリース後の提供品質が変わってきます。品質を高めるためには、住民をはじめとしたユーザーに寄り添い、その時代にマッチしたデジタルメディアにアップデートし続けることが肝要と考えていますので、そういった考え方がこれからの“当たり前”になるようサポートしていきたいです。

また、都内62区市町村のほか、全国各地の自治体サイトも調査をしつつ、先進事例を研究・共有することも始めました。また最近は、調査対象を海外に拡げて主要都市をチェックし始めましたが、DXが進んでいることもあり、すでに多くの大都市がマイページを持ったウェブサイトを運営しています。情報発信も居住エリアごとにパーソナライズされた情報がTOPに表示されたり、オープンデータを活用した道路工事情報がプッシュ通知で届いたりと生活に密着したサービス提供が進んでいます。こうした先進事例に刺激を受けつつ、伴走サポートにも還元していければと考えています。

そしていつかは、今の延長線上にないようなデジタルサービスを生み出していきたいですね。

※ 記載内容は2024年3月時点のものです

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