『プロジェクト型伴走サポート<Webサイトの課題抽出・改善>』レポート(前編)|9自治体のWebサイト改善支援で見えてきた実態と対策、サステナブルな体制づくりのコツとは
GovTech(ガブテック)東京では、2023年10月から2024年3月までの約5か月間、「プロジェクト型伴走サポート<Webサイトの課題抽出・改善>」 を実施しました。
本伴走サポートでは、港区、北区、練馬区、八王子市、青梅市、町田市、日野市、東久留米市、新島村の9自治体が参加し、GovTech東京がWebアクセス解析の基礎知識からコンテンツの改善、施策の実行までを伴走支援しました。
今回は前編/後編に分けて、プロジェクトをふり返ります。
このnote(前編)では、本プロジェクトが立ち上がった経緯と取組、成果について、GovTech東京の桑本に聞きました。
多くの区市町村が抱えるDX課題・ニーズから発足した「プロジェクト型伴走サポート」
──「プロジェクト型伴走サポート<Webサイトの課題抽出・改善>」の一環として、アクセス解析ワークショップを開催された経緯を教えてください。
桑本:稲城市の方から「アクセス解析にもっと取り組んでいきたい」とご相談をいただいたことがきっかけです。当時すでに、東京都庁の各局の支援に向けて、移行したてのGoogle Analytics(GA4)を使ったアクセス解析セミナーを展開していました。そこでの実施内容を踏まえ稲城市職員の方々にも実施したところ、一層意識が高まったという喜びの声をいただきました。
そんな経験を通じて、区市町村のDX支援を担当している同僚と、これは他の自治体でも同様のニーズがありそうだという話をしていました。その後、GovTech東京のサービスに「プロジェクト型伴走サポート」というメニューが立ち上がり、テーマのひとつとして「Webサイトの課題抽出・改善」が生まれ、ワークショップやセミナーを開催することになりました。
サポートの肝は、学んだことをいかに日常化してもらうか
──「プロジェクト型伴走サポート<Webサイトの課題抽出・改善>」ではどのような取組をされるのでしょうか?
桑本:2023年10月に各区市町村を対象に募集を開始し、セミナーやワークショップを開催しました。GA4の基本操作やデータの見方、レポーティング方法についてお伝えし、レクチャー終了後も実務に定着するようダッシュボードを個別に作成、提供しました。12月以降は、各自治体を訪問し、我々が作成したサイト診断レポートをもとに、サイト全体像のレビュー、UI/UXや技術的観点から導かれる課題の説明をしてまわりました。2024年1月からは、各自治体が取り組む施策をそれぞれ企画・実行していただき、3月にはそれらの施策の効果測定を実施し、受講いただいた各区市町村の担当者が集まった場で発表いただきました。
【各自治体へのご支援内容】
今回のプロジェクトに参加された9自治体のうち、北区、港区、日野市、青梅市の施策をピックアップしてご紹介します。
一般的にレクチャー後、満足してしまい、翌日になるとまたいつもの通常業務に戻る…というのはありがちですが、ことDXにおいてはとても大きな課題だと考えていました。だからこそ“学んだことをいかに日常化していただくか”がこのサポートの肝だと考えていました。同時に人事異動によって担当者が変わっても持続的な運用ができるよう複数名で受講いただき、“個人のスキルアップではなく、組織力アップにつながること”を意識していました。
データに基づいた議論を生み、Webサイト改善を促進
── 実際に取り組まれての成果はいかがでしたか?
桑本:レクチャーを直接受講された方の多くは広報業務担当の方でしたが、そのほかにもITやDXを推進する部署の方々にもご理解いただき、打ち合わせにも同席いただきました。そうしたことで、多面的に本サポートを受け止めていただいた自治体も多く、今回のサポート内容が庁内に浸透する期待を感じました。例えばWebサイト診断レポートの結果を受け、受講者が「こういったデータが出ているので、◯◯を変える必要があります」と上長にスムーズに提案できるようになったり、それまでは「ここは使いづらいよね」と感覚的に話し合っていた部分が、データをもとに会話できるようになったりしたことも大きな変化だと感じています。また、全庁に展開していきたいとのご意見も多く、今後それぞれサポートすることも予定しています。
受講者のみなさんが5カ月間積極的に取り組んでくださったため、当初の予定以上に実践的なノウハウをお伝えすることができました。また、実際にやってみるからこそわかる個別事情や課題、躓きポイントがあったり、それらにも適時対応したりと、支援する側とっても学びの多かったサポートになったと感じています。
行政からもっと多くのUX先進事例が出てくる流れをつくっていきたい
── 「プロジェクト型伴走サポート」を経て、GovTech東京として、そして桑本さんとしての今後の展望をお聞かせください。
今回の伴走サポートにおいても、UXの観点からプッシュ通知の有効な活用方法や効果検証の方法などについて民間企業と同等のレベルで議論できています。こういった様々な事例や知見も参考にしながら、今後のより良いサービスの提供実現に向けて伴走していきたいと思っています。自治体DXというと、ITツールの導入やマイナンバーカードといったシステム面が注目されますが、住民サービスにおいて大切なのはDXのX(トランスフォーメーション)の方で、日々のUX改善に向き合っていくことでもあると考えています。そのために、職員のみなさんが日常的に自走していける仕掛けづくりやスキルアップ、情報提供を続けていきたいと考えています。「新しいシステムを導入しました」「リニューアルしました」で終わることなく、行政からもっと多くのUX先進事例が出てくる流れをつくっていきたいですね。
(後編につづく)
※ 記載内容は2024年3月時点のものです