GovTech東京が「デジタル公共財」推しな理由
こんにちは。官民共創グループ長の小木(こぼく)です。
GovTech東京は「東京都庁」と「都内62区市町村」のDX推進を加速するために、東京都と協働する組織として2023年に設立されました。
行政と民間の両方の性質を持っており、デジタル戦略本部官民共創グループでは新サービス創出につながる最先端の知見を、多様なステークホルダーと協働しながらGovTech東京へ取り入れるべく、官と民の結節点となることを目指しています。
GovTech東京と多様なステークホルダーとの間の取組みから見えてきた「官民共創の手法・事例」をこれからも投稿していく予定です。初回は「デジタル公共財」をテーマにお話させてください。
多くのステークホルダーが共同で創り、使っていく「デジタル公共財」
「デジタル公共財」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 英語ではDigital Public Goodsと呼ばれており、国内外で注目されているコンセプトです。
国際的な機関の動向としては、2020年に国連事務総長が「デジタル公共財」整備の重要性について加盟国の協力を訴え、2022年にはDigital Impact AllianceとDigital Public Goods Allianceが共同で「デジタル公共財(DPG)」憲章 を発表しています。上述のDigital Public Goods Alliance によると、デジタル公共財は、次のように定義されています:
また、今年7月には、国際イベントであるFunding the Commons Tokyo 2024が都内で開催され、デジタル公共財を考える数多くのセッションに注目が集まりました。
国内でも関心の高まるデジタル公共財
さらに、デジタル公共財を重要視するモメンタムは、国内でも高まっています。一例では、デジタル行財政改革会議において、岸田総理大臣(当時)は次のように発言をされています:
このようにデジタル公共財は、多くの団体が共同で創り、使っていくリソースとして、定義されています。そして創ったあとには、共同で「使う」。
デジタルの力で公共サービスを維持・強化していくために、国だけでも、自治体だけでもなく、社会全体で広く活用することで、使われれば使われるほどその「財」としての価値が高まっていくネットワーク効果を有するのが、デジタル公共財の大きな特徴の一つです。
さらに、その財の作り手であるクリエーターも、民だけ、官だけに偏ることなく、横断的で多様であることが求められます。
デジタル公共財の4つのカテゴリー
ここで、GovTech東京の理事長である宮坂さん(GovTech東京では、役職名ではなく「さん」付けで呼んでいます)の整理を参照しておきたいと思います。「デジタル公共財」の内訳は、大まかに4種類だと、内訳を定義しています。(下図を参照)
例えば「ソフトウェア」のカテゴリーでは、オープンソースの総量と質を充実させることが目指されています。オープンソースとは、ソフトウェアのソースコードが公開され、誰でも自由に使用、変更、配布できることを意味します。これにより、開発者や研究者が協力して迅速に改善や更新を行い、信頼性の高い情報を提供することが可能になります。特にパンデミックのような緊急事態においては迅速な対応と透明性が重要となります。
また、「データ」のカテゴリーでは、子育てに関する給付金や相談窓口など都内各区市町村と東京都の子育て支援制度に関する公開情報について、誰もが簡単に探し活用できるよう、データを抽出し一覧化した東京都の「東京都版子育て支援制度レジストリ」が公開されました。民間事業者と連携した「プッシュ型子育てサービス」の取組にもつながっており、このレジストリをデジタル公共財として誰もが活用し、必要な情報を都民に先回りで届けることが可能となります。
このように自治体の施策に注目するだけでも、デジタル公共財を創出するための各種の取り組みが平行し進められているのがお分かりいただけるのではないでしょうか。
制度やナレッジも、デジタル公共財になる
注目しておきたいのは、「制度・ナレッジ」のカテゴリーです。東京都においては、例えば「文章生成AI利活用」や「サービスデザイン」など各種のガイドラインは、都庁内で活用できることはもちろん、全国の広域自治体・基礎自治体においても参照し、カスタマイズしてもらうことを前提に、公開されています。
GovTech東京の注力する「GovTech東京パートナーズ」や「共同調達」の取り組みを通じて、基礎自治体が人材面や資金面のリソース(コスト)合理化にもつながることはもちろん、「ノウハウ・知見の共有」もGovTech東京では重視しています。これらもデジタル公共財の「制度・ナレッジ」のカテゴリーを構成するものだと言えるでしょう。
GovTech東京は中期経営計画においてもデジタル公共財を重視
GovTech東京は、「デジタル公共財」の重要性を、中期経営計画においても明確に打ち出しており、「技術やデザイン等のガイドライン、教育カリキュラムなど知的資源の開発・共同化」と題したセクションでは、以下のような6つの取り組みを例示しています。
技術等に関するガイドラインの開発
内製化や共同調達、AI活用等の技術的なナレッジを整備、ユースケース毎のガイドラインの使い方について見える化
デジタル公共財としての公開方針や管理運用ルールの整備・確立
ルールやガイドライン等の策定にあたってのアカデミアとの共創 など
採用・人材育成に関わる コンテンツ等の充実
東京都・区市町村におけるICT人材育成に向けた教育カリキュラム・コンテンツ等の企画・共同化
外部機関等と連携したデジタルスキルを体系的に整理したDSM(デジタルスキルマップ) の見直しや対象範囲等の更なる拡大
民間人材向けGQ(Government Intelligence Quotient)コンテンツの開発 など
上記の、 「ルールやガイドライン等の策定にあたってのアカデミアとの共創」などの活動を通じて、ガイドラインやコンテンツを自治体がそれぞれバラバラに作成・導入していた旧来の在り方から、GovTech東京が都庁各局・都内基礎自治体向けにデジタル公共財として知的資源を共有することで、共通で利用可能なガイドライン等を創出し、自治体の負担軽減と品質の安定化に貢献することを目指しています(下図参照)。
こうした「デジタル公共財」は、GovTech東京のメンバーだけで創出できるものではなく、多数の都庁職員・都内自治体職員・協力をいただく民間企業各社・各分野のアカデミアなど、多様なステークホルダーとの共創を通じて創り上げ、住民参加のもと都民皆さんとともに磨き続けることが大切だと、GovTech東京では考えています。
おわりに
今後もGovTech東京は「多様な主体との共創によるイノベーション」の実現を追求するなかで、「デジタル公共財の拡大/デジタル公共財を活用したサービス創出支援」に取り組んで行きます。
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