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デジタルサービスの品質を高めるためのユーザーリサーチの重要性

GovTech東京は、東京都庁と都内62区市町村のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するために2023年に設立されました。

東京都は行政サービスの質を高め、住民の暮らしの質を向上することを目指しており、都政のクオリティ向上を目標に都庁各局と、都と連携する政策連携団体への技術支援を行っているのが都政DXグループです。

GovTech東京のサービス


都政DXグループでは、主に、東京都で実施している企画などの上流工程の支援や要件定義、プロジェクトの進捗管理を通じて、事業の成功に向けて強力にサポートをしています。
日々の業務の中から見えてきた行政サービスの品質向上につながるノウハウやアイディアをnoteにて、連載形式でご紹介しています!

連載2本目は、行政が都民の声をサービスに取りいれるべく行っている工夫として「ユーザーリサーチ」をテーマに展開していきます



はじめに

こんにちは!都政DXグループの山岸(やまぎし)です。東京都庁からGovTech東京に出向という形で来て、様々な経験を持つメンバーから刺激を受けながら日々過ごしています。

都民の方々が求めるデジタルサービスを作るために、東京都とわたしたち都政DXグループがサービス企画段階に取り組んでいることをご紹介します。
この記事は行政サービスに携わる方はもちろん、行政の新規事業ってそもそも何しているのか気になる方にもおすすめです。

東京都で作成・公開しているユーザーリサーチのガイド資料も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください!

東京都庁のユーザーリサーチとは?そのメリットは?

都政サービスを魅力的品質にすることを目標とする私たちにとって、都民の皆さまの声を知ることはとても重要です。サービスの良し悪しは提供者ではなく利用者が決めるものだからです。

しかし、サービス提供者が考えるだけでは、どんなに頑張ってもそのニーズを正確に把握するには限界があります。ここでユーザーリサーチという活動が重要な役割を果たします。

ユーザーリサーチとは、東京都では以下の活動をいいます。

ユーザーリサーチとは、定量調査や定性調査を用いてサービス利用者の潜在的なニーズや真の課題を抽出し、最適な解決策を導くための活動

引用:2024年3月東京都デジタルサービス局「ユーザーリサーチの進め方」

具体的には、サービスの企画段階でインタビューやアンケート、観察などを行います。これらを通じて利用者のニーズ、行動、課題を理解します。このユーザーリサーチを最初に行うことで都民の実生活に即したサービス設計(要件定義や仕様書作成)が可能になるのです。これには大きなメリットがあります。

ユーザーリサーチをする場合としない場合とでは、例えば以下のようなことが起こり得ます。

ユーザーリサーチをする場合

  • 潜在的なニーズも踏まえて要件を決定できるため、追加機能開発などの手戻りリスクを抑えられる

  • 利用者のニーズに真に応えるサービスを提供可能

ユーザーリサーチをしない場合

  • 開発段階で「この機能も必要」と気づき、追加作業や手戻りが発生

  • 行政の契約ルール上、迅速な追加契約が困難のため、修正できないままリリース日を迎えてしまう。その結果、使いにくいサービスとなり、クオリティ向上のため追加の対応に追われる事態に繋がる可能性がある

都政DXグループでは、仕様書作成についてのノウハウ記事も公開しています。ぜひご覧ください!

ユーザーリサーチを行う上での注意点や課題

ユーザーリサーチには大きなメリットがありますが、いくつか注意点や課題もあります。

1.時間と予算の制約

  • 十分なリサーチには時間と予算が必要

  • リサーチ結果によっては、既存計画の修正が発生し、修正のための時間が必要になることもある

  • 限られたリソースで最大限の効果を得るため、適切な実施計画が重要

2.具体的な利用者層の想定

  • 行政サービスはすべての都民への還元を重視するため、具体的な利用者像の設定が難しいこともある

  • 一方で、利用者層を漠然と「都民」と仮定して実施すると、リサーチ対象が実際の利用者像と異なる可能性もあるので注意が必要(実際に東京都は多様な状況の都民の方々が暮らしています。62の区市町村があり、様々な職業、趣味、家族構成があります)

3.仮説に基づくヒアリング項目設計

  • 都民の課題感や想いを拾うには事前準備が必要

  • 適切な質問設計により、より深い洞察(表面的に聞くだけでは分からない、潜在的なニーズの理解)を得ることが可能

  • 反対に「何となく話を聞く」ではヒアリング漏れや結果の整理が困難になる可能性

4.中立的な立場の維持

  • 先入観に流されず、相手の声に耳を傾ける

  • 予想外の意見に遭遇したときこそ、重要な気づきという心がけで聴く

この課題や注意をクリアするためには予めユーザーリサーチを踏まえた事業計画立てや、準備が必要になります。はじめは、困難かと思いますが、都政DXグループでは企画工程の支援の一環として、ユーザーリサーチの実施もサポートさせていただいています。

最初は大変に感じていても、私たちの支援を通じてメリットを体感してもらうことで、継続的に実践される状態にすることを目指しています。

おわりに

ユーザーリサーチは、利用者の声を事業企画段階で反映できる、サービス品質向上に効果的な活動です。この記事を通じて、ユーザーリサーチや、都政DXグループの上流工程支援にご興味を持っていただけたら嬉しいです。

東京都ではユーザーリサーチの進め方に関する解説資料を公開しており、実際に私たち都政DXグループも各局職員の皆さんへの説明に活用しています。リサーチ前に予め検討・準備することや、質問時のポイントもまとまっているのでもう少し詳しく東京都のユーザーリサーチの進め方を知りたい方は、ぜひご覧ください!

これからも私たち都政DXグループは、各現場の職員の方々と協力しながら、都政のクオリティ向上に努めていきます。

私たちの活動について、note記事も随時アップしていきますので、応援していただけると嬉しいです!

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