「情熱あふれる行政イノベーションの世界」多様なセクターのハブとなり、持続的な未来へ貢献したい
2024年6月にGovTech東京の戦略広報グループ長に就任した端山愛子は、民間企業やNPOで広報・PRの仕事に従事し、上場企業の執行役員を経てGovTech東京に入社しました。
次のキャリアとしてGovTech東京を選んだ理由や戦略広報のおもしろさ、今後の挑戦について話を聞きました。
多様なバックグランドの人材が情熱を共有し、行政DXを切り拓く
── GovTech東京で担う役割を教えてください。
GovTech東京は、「東京都庁」と「都内62区市町村」のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を加速するために、都庁のデジタルサービス局と協働する組織として2023年に設立されました。「デジタルの力で 住民一人一人の生活を豊かに、そして幸せに」というミッションの実現に向けて、行政分野のデジタルサービス開発や、技術支援を担う専門家集団です。
その中で私たち戦略広報グループは、様々な経営・事業課題に対し、ステークホルダーとの関係性の強化やコミュニケーションの観点から貢献するのが役割です。
世の中全体としてあらゆる業界におけるDXが進んでいく中、市民生活の向上のために行政セクターもDXに対し全力で取り組んでいます。行政は、住民である私たちにとっても関わりが深く大事なものである一方で、その取組や背景はあまり知られておらず、各自治体での取り組みも、GovTech東京の存在も、まだあまり知られていないのが現状です。
組織としては設立から約1年。自治体や関連団体はもちろん、国や、企業、アカデミアなどいろんなセクターとも連携し、えがいた未来にむけて成果がではじめている、とてもおもしろいフェーズです。
実際に組織に入ってみると、想像以上に情熱的な方々が集まっていて驚きました。静かに想いがあふれ出るタイプの情熱で、根底にある強い熱意を多くの方から感じています。
一見外からはわかりにくい「行政DXの世界」の熱量を、もっと多くの方に知っていただきたい。それによって、もっと多様でおもしろいアイデアやテクノロジー、人材が集まるようにしたい。
世の中全体が最強のワンチームとなるために、どうすればいいかという広い視点を大事にしながら、世の中との関係性づくりを目指したいと思います。
「社会課題×しくみづくり」を軸にキャリアを形成
── 端山さんの経歴について、教えてください。
「日本を元気に」という理念に共感し、2005年に新卒で楽天に入社しました。多くの地方自治体との連携を推進する部門の立ち上げメンバーとして、ECを手段に地域創生や関係人口を増やすことに取り組んでいました。
出張も多く、地域経済を支える地元の商店や事業者の皆さんとも一緒に試行錯誤を重ねる中、プロジェクトが進むにつれ日に日に皆さんの表情が変わり、パワフルになっていくのを感じました。そして地域の魅力や価値が循環しはじめました。
このポジティブな渦を、現場で、肌で感じられたのが私にとって転機のひとつでした。社会がよくなっていく、社会課題に貢献できていること自体が、自分がいちばん喜びを感じる大きな軸のひとつであることに気づきました。
その後は、企業やNPOで「社会課題×しくみづくり」を軸にマーケティングやPRの経験を重ねました。
そんな中、場所のシェアリングプラットフォームを運営するスペースマーケットというスタートアップに出会い、2015年に社員約10人の創業期からジョインしました。「場所の貸し借り」のしくみを通じて、様々な社会テーマにポジティブなインパクトを生み出すべく、PR部門をリードし、執行役員として株式上場も経験しました。
世の中の課題に挑む、これほどおもしろい組織が、まだ知られていない
── GovTech東京に参画された決め手は?
東京都の副知事である宮坂さんが都庁のデジタル化を推進し、世間から注目されていることはなんとなく知っていました。でも、そこからさらに新しい団体(GovTech東京)が立ち上がり、チャレンジングな取組が広がっていることは知らず、内容を知れば知るほど、率直に驚きました。
そして、GovTech東京は都内に閉ざさず、日本全国、そして世界に貢献していくというビジョンに、とても本質的な価値を感じました。
同時に「行政DXの世界の課題の奥深さと、それらの解決に挑んでいるこれほどおもしろい組織があるのに、まだあまり知られていない」という事実に、PRパーソンとしての使命感をおぼえ、自分の中で燃え上がるものを感じました。
── GovTech東京の魅力だと思うポイントについて教えてください。
たくさんありますが、GovTech東京が大切にしている軸のひとつに「誰かが考えた良いアイデアやしくみを、一部の人や組織でとどめるのではなく、みんなが使えるように公共財として広めていく」という考えがあります。そしてこれベースに、多くの取組が推進されています。
しばらく民間企業にいた私にはとても新鮮で、とても魅力的な思想だと思いました。もちろん企業であっても、業務領域によっては、他企業との交流の中で情報交換したり、勉強会等で組織を超えて高め合うことはあります。とはいえ、企業秘密にしておくことも多いです。
しかし、公共性の高い領域は、あらゆるノウハウシェアが広がっていい世界です。自治体が違っても同じような悩みがあります。共通する課題に対し、各自治体がそれぞれ同じように時間やお金をかけるのはもったいない。試行錯誤のプロセス、その先に生み出されたしくみやアイデアを積極的にシェアしていけばいい。いわゆる「車輪の再発明はしない」ということです。
もちろん、自治体ごとにオリジナリティを出すべきところはもちろん大切にしながら、既にいいものがあればそれを活用し、必要に応じてアレンジすればいい。この思想が団体の根底にあることは、大きな魅力のひとつであると思います。
GovTech東京は、先進的な自治体のノウハウがシェアできるつながりの場を作ることにも注力しています。その成果として、これまでにはなかった自治体同士の横連携も増えています。
例えばデジタル人材の採用や育成のノウハウ、ツールやシステムの調達など、GovTech東京がハブとなり、この考え方で多くのコスト削減も実現しました。そしてそれに伴うノウハウ、ベストプラクティスの共有が進められています。広報としても、今後この「知恵の共有」を、様々な切り口・表現で発信し、そして世の中を巻き込んでこの思想を広げていきたいです。
本質を伝えるため、手段はフラットに
── 戦略広報グループ長として大切にしていることを教えてください。
GovTech東京は行政機関の側面も持ち合わせているので、透明性や公平性を重視する必要はありますが、情報が正確=言いたいことが伝わるわけではありません。「本質が相手に伝わる」ための手段や手法は、固定観念にとらわれずいろんな表現にチャレンジしたいです。
やみくもに発信量を増やすのではなく、課題やボトルネックを深堀したうえで、誰がどんな状態(パーセプション)になることを目指すのかを明確にしつつ、経営陣とも現場とも目線を合わせながらアクションすることが大事だと思っています。
── 対外的なコミュニケーションで、特に重視したいポイントは?
あたりまえの話ではありますが、様々な取組や成果を伝える際「なぜやるか」のストーリーやその先に生まれた価値を、わかりやすい表現で伝えていきたいです。
多くの企業では、自社の取組による自社の利益だけでなく「世の中にとってどうポジティブなのか」を背景とともに伝えることで多くの人に共感してもらえるよう、試行錯誤していると思います。
一方、行政機関では、取組はすべて「公」に関わることであり、社会課題に紐づいているため、「その背景は周知の事実だろう」という認識から省略してしまうケースが多々あり、情報の届け先である住民がピンときていないケースも多いように思います。
GovTech東京では、ストーリーを丁寧に伝え、多くの人に興味をもっていただき、双方向に対話もしながら仲間を増やしていきたいですね。インナーコミュニケーションの観点からも大事だと思います。
現在はテキストベースでの発信やイベントでの表現が多いですが、今後はもっと自由な発想でのクリエイティブにもチャレンジしたいですし、課題に応じて他セクターとのコラボレーションなど、手段は柔軟に検討していきたいです。
持続可能な未来に向け、真価を発揮
── 今後のビジョンについて教えてください。
昨今はサステナビリティという言葉が浸透し、持続可能な未来の実現に向けて、様々なセクターが連携した動きが加速しています。ソーシャルインパクトという面から様々な取組の価値が表現・評価されることも増えてきました。
このような大きな世の中の波に、GovTech東京が描く未来も合流し、サステナビリティの観点からも価値をより認識してもらえるようにしたいです。そして、持続可能で誰一人取り残されない未来の実現に向け、まずは東京都において、デジタルの面から貢献するエンジンのような存在になれたらと。結果的に「行政DX」という文脈よりも大きな波の中で、私たちがもっと真価を発揮できたらと思います。
── 戦略広報グループのメンバーも募集中ですが、どのような人が向いていると思いますか?
あたりまえですが行政の世界では、「特定の顧客」というものが存在せず、シェアの奪い合いという考え方もありません。だからこそ、本質的な価値やコミュニケーションの在り方を追求したい人には合っていると思います。
GovTech東京というこれまでにない新しい枠組みの組織で、様々なバックグラウンドの人たちが集まっています。カオスな状況も楽しみながら、仲間をリスペクトしながら、大きな山の頂を目指して登っていきたいと思えるような方とご一緒できたらと思います。
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※ 記載内容は2024年8月時点のものです