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区市町村との二人三脚で挑む、行政業務のDX。学童クラブ入所申請のオンライン化率98%を実現した「伴走支援のあり方」

稲城市はGovTech(ガブテック)東京と連携し、学童クラブ入所申請のデジタル化や市のWebサイトの改善、公共施設予約管理システムの刷新といった行政サービスのDXを進めています。

その取組の背景やきっかけ、プロジェクトの全体像について、稲城市ICT推進課の稲垣氏と吉田氏、稲城市に伴走したGovTech東京の瀬能と西澤でふり返りました。


稲城市 ICT推進課、東京都・GovTech東京との連携で行政DXを加速

── まずは稲城市のお二人から、現職で担われている役割について教えてください。

稲垣氏:企画部 ICT推進課の課長として情報システム全体のマネジメントと方針決定をしています。

吉田氏:私は2023年(令和5年)4月にICT推進課 ICT推進係のデジタル化推進担当係長に着任し、DXの中でも行政手続きのデジタル化、フロントヤードの役割を担っています。新設されたポストであり、庁内のデジタル化をより加速させる役目を担っています。ICT推進係には、私の他に情報システムの担当者が5名います。

稲垣氏:行政手続きのオンライン化、デジタル化を進めていくためには、担当課に伴走することが必要であるという考えのもと吉田係長が担当しています。

── GovTech東京のお二人の役割を教えてください。

瀬能:2023年9月から事業を開始したGovTech東京のデジタルサービス本部 区市町村DXグループに所属しています。東京都に62ある区市町村と連携してDXを推進しています。「お手伝いできることはありませんか」と声がけをしたところ、稲城市に手をあげていただきました。成功事例がひとつできると、新たなご相談をいただけるのでお付き合いが深まっています。GovTech東京の視点からで恐縮ですが、稲城市を自治体DXのモデルケースにして他の区市町村に広げていきたいと考えています。

西澤:2023年4月に東京都に入庁し、9月より都からの派遣職員としてGovTech東京の区市町村DXグループで仕事をしています。学童クラブに関する支援に特化し、稲城市のプロジェクトにも参画して学ばせていただきながら、他の自治体にもノウハウを展開する仕事をしています。BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)の考え方をもとに様々な区市町村のDXプロジェクトに伴走しており、稲城市についてはKPI設定や電子申請フォーム作成のお手伝いなどを担当しました。

学童クラブのDXはスマホ世代の保護者がターゲット

── 稲城市とGovTech東京のプロジェクトが、先行事例となるまでの経緯を教えてください。

稲垣氏:東京都とGovTech東京との連携は、「市のWebサイト改善」から始まりました。当時の稲城市のWebサイト運用は、アクセス数などの集計結果を必ずしも有効活用できていませんでした。集計作業自体を廃止するというような話も出てきたのですが、東京都 デジタルサービス局 区市町村DX協働課に相談してから方針を決定することになり、それをきっかけに連携を開始しました。その後、「学童クラブ入所申請のデジタル化」「公共施設の予約管理システム導入」のプロジェクトに広がっていきました。

瀬能:どの自治体にもWebサイトがありますが、もっと活用できるのではないかと感じています。そして、それはおそらく区市町村共通の課題ではないかと考えています。稲城市から相談があったときに、Webサイト領域に詳しい同僚を交えてまずは一度分析してみることにしました。その分析結果をもとに次のWebサイト改善時に反映させようという話を進めています。

吉田氏:稲城市の行政手続きのデジタル化の対象として、学童クラブ入所申請のデジタル化が候補になりました。スマホ世代である小学生の親御さんをターゲットにし、いくつかの候補がある中で学童クラブに関する業務が着手しやすいのではと考えたのです。入所申請だけオンライン化すればいいのか、それとも入所判定などのバックヤードも含めてデジタル化を進めるべきか。担当課と話し合いながら一緒にシステムを構築していく中で、稲城市だけの力で実装することは難しいと判断し、東京都 デジタルサービス局に相談して、伴走いただくことにしました。

施設予約管理システムについてもGovTech東京に相談し、導入を進めました。システムベンダーとの契約更新が翌年に控えている中、キャッシュレス決済やスマートキーを導入することで役所に足を運ばなくても施設予約ができる窓口を目指しています。

稲垣氏:施設予約管理システムは、GovTech東京が東京都内の複数の区市町村向けに共同調達する対象サービスになっています。共同調達対象のシステム要件の中にオンライン予約やキャッシュレス決済、スマートキーがあり、それらがまさに稲城市が求めている公共施設の予約システムの機能要件でした。現在は予約のみオンラインでできるのですが、窓口に行かなくてもすべてが完結する公共施設の予約管理システムを作ろうということになりました。ただ単に共同調達するだけでなく、既存のシステムからの移行に向けた課題への対応についてGovTech東京に一緒に考えていただきました。

必要なのはきっかけ、メリット、やると決めて走り切るマインドセット

── 学童クラブ関連業務のデジタル化について、詳しく教えてください。

吉田氏:学童クラブ関連のシステムを大別すると、「市民からの入所申請」「市による判定」「お金などの管理」があります。今までは紙(書類)で入所申請をしてもらい、職員が手入力したExcelで情報を管理していました。Webシステムを利用できていたのは育成料の通知など一部の業務だけで、メインの業務である入所判定も、印刷した書類を見ながら職員が会議を行うというアナログな業務形態のままでした。

申請フォームにローコードツールを利用することは決まっていましたが、入所判定との連動性に対する方針がありませんでした。そこで2023年(令和5年)5月から東京都に支援してもらい、引き続きGovTech東京にサポートしてもらっています。

オンライン化を推進するためにはきっかけが必要でした。担当課の職員は普段の業務だけでも忙しく、課題があってもその解決に動きにくい状況です。BPRにしてもDXにしても担当課に無理を強いて取り組んでもらうのではなく、こちらからメリットを提示して、やる意味やその必要性を理解してもらえないと物事は進みません。2023年(令和5年)度より、ICT推進課の中にデジタル化推進担当が設置され、東京都にもプロジェクトに参画していただくことによって動き始めることができました。

── どのようにして進めたのでしょうか?

西澤:2022年度に東京都が、他自治体の学童クラブの入所申請・判定をお手伝いした事例がありました。今回の連携開始当初は、そのノウハウの展開をということでスタートしましたが、他の自治体向けに作成した判定用のExcelシートそのままでは稲城市の選定方法とは合わず、使用できなかったのです。

公表されていた入所判定のルールをもとに自動計算できるシステムを構築していきました。また今回は、この取組みを今後さらに他の自治体にも展開することを想定したシステム構築を行いました。最初から要件をガチっと決めてウォーターフォール型で作らない方がよいと判断し、まずはラフ案をご提案。ユーザーテストを繰り返し、要望を伺いながら改善していきました。申請フォームの構築作業も並行して動いていたので、お互いにはしごを少しずつ登るようなイメージで進め、成果物として仕上げることができました。

GovTech東京設立後は、システムの本番導入に向けた最終確認・調整業務を担いました。稲城市は自走する形でプロジェクトを進めてくださったので、GovTech東京が手取り足取り支援をしたのではなく、伴走する形でした。具体的には、稲城市がExcelを修正したりユーザーテストを実施したりする際の支援を行いました。

瀬能:今年度中に本番適用するのは難しいと思っていたのですが、やると決めて走り始めましたね。

吉田氏:スケジュール的には、GovTech東京に無理をきいていただいた形です。本市で作成した工程表を提示し、業務を振り分け、何とか間に合いました。

瀬能:そのほかの取組として、東京都は区市町村向けの研修を提供しています。その中に職員の皆さまのマインドをDXに向けるための研修があり、稲城市の職員の方に受講いただきました。

吉田氏:当初は窓口業務改善についてのソリューションをお願いしようと考えていました。しかし、いわゆる2040年問題からバックキャストでDXを進めるという話を研修で学び、マインドセットが変わりました。稲城市という組織全体のDXを進める上でマインドが重要だということを理解し、方向転換できたため全庁展開できたのだと思います。実際に職員からも「意識が変わった」「そういう考え方は今までしてこなかった」との声が出ているので、意味のある研修になったと考えています。

学童クラブ入所申請のオンライン化率98%を実現

── 市民の反応はいかがでしたか?

吉田氏:毎年、学童クラブの入所申請の時期には窓口に行列ができていましたが、今年度はそれがなくなりました。98%の方にオンライン申請を利用いただいています。学童クラブを利用する世帯は共働きが多く、市役所に行く時間のない方々がほとんどです。実際、前年度までは休日窓口で学童クラブの申請受付をやっていました。アンケート結果を見ても、オンライン申請はほとんどの方に好意的に受け入れられています。

また、原則はオンライン申請としながら、従来の方法を好む方も一定数いらっしゃることを想定した配慮もしました。例えば、窓口に来た方がオンライン申請できるようその場でサポートする職員を配置しましたが、実際のところ窓口で入所申請される方はあまりいらっしゃいませんでした。

「オンライン申請」という軸からぶれずに推進できたことが、結果として非常に重要でした。行政としては「オンライン申請ができない方は、休日窓口で紙での申請を受け付けます」という対応をしがちですが、そうではなくオンライン申請をするための説明会を実施しました。「原則はオンライン申請」という意思表示を行政が明確に示したことが、成果につながった大きな要因です。

吉田氏: 市民満足度調査の結果、学童クラブの入所申請フォームについては8割の方が「非常に満足」と回答してくださっています。

市民の方に対する、申請内容の修正依頼が発生することも予見していたので、デジタル窓口機能を学童クラブのオンライン化に合わせて導入しました。市から修正してほしい部分をオンラインでお伝えすると、市民の方々が時間と場所を選ばずいつでも対応できるようになりました。

瀬能:基本的な入力エラーを防げるようになったのもオンライン化の利点です。紙での申請の場合は矛盾した内容のままでも申請できてしまいますが、オンライン申請ではエラー表示をすることにより入力ミスのまま申請されることはほぼ無くなります。市民の修正負担も、職員の事務負担も大幅に削減できるのです。

稲城市を先行事例として、他の自治体に展開

── 今後、新たに取り組みたいことがあれば教えてください。

稲垣氏:学童クラブ業務のデジタル化が成功したもうひとつの大きな要因として、「担当課の努力」があります。一般的に行政がDXを進める際の苦労としてよくあるのが、デジタル部門と担当課がうまく噛み合わないことです。今回のプロジェクトでは、担当課がすべてをオンライン化するという意志を強く示してくれて、現場での苦労も乗り越えてくれました。さらにGovTech東京が支援してくれ、新設したデジタル化推進担当の活躍もあり成果を出せました。GovTech東京の方々が現場の話をよく聞いて、その中から何が必要なのかを一緒になって考えてくださったことに感謝しています。そして、行政手続オンライン化には、市民の方々のご協力も欠かせません。今後は市民の方々が書いてくださったアンケートの内容を、さらなる行政サービスのDXとしてフィードバックさせていくことが重要だと考えています。

瀬能:今後もコミュニケーションを取りながら、寄り添ってDXのお手伝いができればと思っています。学童クラブのシステムはそれぞれの区市町村にあわせて変更をしながら、他の自治体に展開し始めています。

吉田氏:ICT推進担当としてありがたいと感じたのは、GovTech東京の伴走支援のあり方です。稲城市としては人的リソースが限られている中で、何をどうやって進めるべきなのか、その優先順位をよく考える必要がありました。さらに、自治体DXを進めていくためには市民サービスの向上だけではなく、担当課の事務の効率化も合わせて推進していく必要があります。実際に学童クラブの件では、窓口対応と入所判定については職員の負荷を軽減することができました。

そのように、当初想定していた目の前の課題だけでなく、より広い視野、中長期的な視点をもって伴走いただけるGovTech東京の皆さんの存在は大変心強いです。今後のプロジェクトでも、ぜひ二人三脚で取り組んでいけたらと思います。

※ 記載内容は2024年2月時点のものです

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