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GovTech東京をDX人材輩出組織へ──官民の垣根をなくす「リボルビングドア」をめざす

2023年9月に事業を開始した、官民が協働してDXを推進するプラットフォーム「一般財団法人GovTech(ガブテック)東京」で、デジタル人材本部長として組織基盤づくりを担う小島 隆秀。「官民を自由に行き来するキャリアを当たり前にしたい」と話す小島が描く、GovTech東京の人材戦略とは?

※このnoteは、2023年8月にtalentbookで公開したものを、一部編集・更新して掲載しています。


当たり前を疑いながら、“全体最適”でオープン&フラットな組織を作る

──2023年9月に、官民が協働してDXを推進するプラットフォーム「一般財団法人GovTech東京」が事業開始しました。まずは、小島さんがGovTech東京で担う役割を教えてください。

私は、人事責任者として、採用・制度企画・人材開発・労務といった人事業務を統括する立場です。

GovTech東京は、行政と深く関わりながらも外郭団体として新しいDXの形に挑戦する組織ですから、人事担当者も官民織り交ぜた、さまざまな経験を持っているメンバーで構成していきたいと考えています。

今、あらゆる業界がデジタル人材を求めています。そうした状況の中、GovTech東京が採用力を強化していくためにも、民間の水準、もしくはそれ以上の働きやすい環境づくりをめざしています。

──GovTech東京は、組織づくりのキーワードとして「オープン&フラット」を掲げています。オープン&フラットを実現するためには、何が必要だと考えていますか?

オープンは、言うなれば多様性です。行政経験者とデジタル人材を中心とする民間経験者、そして、女性や外国人の方など、多様なバックボーンや特性を持った組織にしたいと考えています。

フラットという部分では、心理的安全性が重要だと考えています。それぞれが個の力だけで戦うのではなく、チームとして成果を出していく。さらには、東京都や区市町村、政策連携団体ともワンチームになって取り組むためには、意見やノウハウを自由闊達に出し合える風土が必要です。

多種多様な人材が躍動するためには、できる限り性善説に立ってルールや制度を作る、そして、できる限りシンプルかつ合理的に組織をデザインすることが重要だと考えています。

組織運営においてリスクヘッジも大事ではあるものの、統制の意識が強すぎるあまり、ルールでがんじがらめに縛ることは、結果として、組織のアジリティやエンゲージメントを低下させる恐れがあります。これは、組織全体の心理的安全性を高める上においても重要な観点だと思っています。

──これから新しい組織づくりに挑戦しますが、人事として大切にしている考え方はありますか?

一つめは、意志を持ってプロアクティブに動くこと。

人事という仕事は、経営陣、職員(従業員)、応募者、外部のパートナー企業など、ステークホルダーが多いんです。自戒の念を込めてですが、受け身で御用聞きの人事にはあまりバリューがないと思っているので、仮説ベースでもいいから、意志を持って施策やアイデアを考えていく。

そのためにも、こちらからステークホルダーに対して、積極的に課題や情報を取りにいくことを心がけています。

二つめは、当たり前を疑うこと。「本当に今の状態が健全なのか?」を常に考えることです。

私はこれまで、変化の激しいIT業界で人事の経験を積んできたこともあり、組織づくりにおける施策も常に変化を求められてきました。「昨日うまくいったものが、今日もうまくいくとは限らない」という意識で常に取り組んでいます。

そして、部分最適ではなく、“全体最適”で考えること。

人事は、経営と現場の間に立つ“バランサー”のようなポジションだと思っています。経営には時として合理性が必要ですが、現場には現場の感情があります。ですから、経営の合理性と現場の感情の間でバランス感覚を持ちながら、情報を正しく解釈して本質をとらえる、全体最適の視点で対応することが、私がめざす理想の人事です。

せっかくなら、未知なる世界へ──ハードシングスを乗り越え、“渋み”をめざす

──これまでIT業界を中心に人事の経験を積んできたとのことですが、小島さんのキャリアを簡単に教えてください。

新卒で大手人材会社に入社しました。数年間、営業として企業向けの採用コンサルティングを行う中で、採用にもっと深く関わりつつ、育成や組織づくりといった分野にも関わってみたいと思うようになり、大手ゲーム会社に転職しました。ここが、人事としてのキャリアのスタートです。

その後は、IT業界中心にスタートアップやメガベンチャーなど、さまざまな規模やステージの企業で人事を経験しました。

──いろいろな組織づくりに携わる中で、とくに大変だった出来事はありますか?

これまでのキャリアを振り返れば、私は、なぜか行く先々でハードシングスにどっぷりと浸ることが多く……(笑)。

ハードシングスの出発点は、社会人デビュー直後だったかと思います。新卒で入社した会社が、リーマンショックによる業績悪化の影響もあって、入社半年が経過したころに社内で構造改革が行われたんです。その結果、チームはバラバラに解散しました。

これまで私は何度か転職を経験していますが、「迷ったら大変そうな方を選ぶ」「カオスにこそ成長機会がある」という自分なりの信念をもってキャリアを選択してきました。

それもあってか、たとえば、スタートアップでは急成長に伴う歪みもあって組織が瓦解しかけたり、成熟した企業では会社内部で権力争いが起きたり、所属企業が買収されて初めてPMIを経験することになったり……。

ここでは話せないこともたくさんありますが、行く先々で、濃厚かつ味わい深い経験をさせていただきました。

友人には、「“持ってる”ね」と言われます(笑)。

──確かに、持ってますね……。そういった困難に遭遇したときは、どういった気持ちで乗り越えてきたのでしょうか?

今思えば大変なことばかりでしたが、自分で選んだ道なので悲観的に捉えたことはなく、「他の人よりも貴重な経験ができている」と、ポジティブな気持ちで向き合っていることが多かったです。

混沌とした環境の中で、いかにサバイブしながら、意志を持ってコトを為していくか。そのために必要な力を私は“ビジネス戦闘力”と勝手に呼んでいますが、困難に直面するほど、このビジネス戦闘力が高められると考えています。

前に進み続けていれば、いずれ夜明けはやってくるんですよね。それを繰り返していけば、ビジネスパーソンとしての深み、そして、その先の“渋み”が出てくると思っています。

──そんな“渋み”が出てくるような経験をされてきて、今回GovTech東京に参画された理由は何だったのでしょうか?

私自身、これまでビジネスパーソンとしては、決して何か大きな成功をしてきたわけではありません。ただ、人一倍いろいろなケースを経験し、乗り越えてきた自負はあるので、そこで培った知見や経験、研ぎ澄ましてきた感覚を、より社会のために使いたいという気持ちが強くなってきました。

次のチャレンジを考えるにあたっては、これまで経験してきた民間企業も当初は選択肢に入っていましたが、なんだかあまりワクワクしなかったんです。成果を出せるイメージはあるものの、自分の想像の範囲を超えない。せっかくなら、足がすくむような未知の領域に身を置いてみたいと思ったときに、GovTech東京が人事を公募していることを知りました。

民間一筋でやってきた自分にとってはまさしく未知の領域でしたが、民間出身ですでに行政で活躍していた知人の後押しもあり、最終的に迷いなくチャレンジすることができました。

民間基準で、技術者が活躍できる“しなやかな”環境を作る

──GovTech東京は現在、メンバーを募集していますが、どのような価値観やキャリアを持っている人に来てほしいと考えていますか?

まずは何より、行政と民間が力を合わせて東京全体のDXを推進するというGovTech東京の意義に、強いシンパシーを感じてくれる人ですね。

さらに、誰かが良くしてくれるだろうという“傍観者”ではなく、「自分の経験や知見を、社会のため、人のために役立てたい」という想いと覚悟をもって“当事者”になりたい人が理想です。

これまでのキャリアに関しては、民間でのプロジェクトマネジメントやシステム開発の経験は必要ですが、行政に関わった経験は必須ではありません。

それよりも大事なことは、関係各所との折衝や調整がスムーズにできること。東京都や区市町村の人たちと連携してプロジェクトを動かしていくことになるので、互いの得意分野を活かした連携やコミュニケーションができることが大切です。

──民間と同じかそれ以上の環境をめざすとのことでしたが、制度面では、どのような部分にこだわっていますか?

GovTech東京では、職員が多様な経験を積むことを後押ししていきたいと考えています。そのため、兼業や副業も許容していく方針です。たとえば、GovTech東京に勤務しながら、他の自治体のDXアドバイザーに従事するなどの働き方も可能になります。

また、現在募集中のメンバーに関しては、一部職種を除き、原則フルタイム勤務での募集となりますが、ゆくゆくはパートタイムでの勤務なども可能にして、働き方のオプションを広げていく予定です。

創業期はチームビルディングが重要であるため、職員同士がオンサイトで協働する時間を大事にしていきたいと考えていますが、状況を見ながら、コアタイムなしのフルフレックス、フルリモートでの勤務を取り入れ、働く時間も場所も選べるようにしたいと考えています。これは、労働集約型ではなく、生産性を重視した働き方をめざすということです。

──ジョブ型に近い採用になると思いますが、評価やキャリアパスに関してはどんな部分を重視していく予定ですか?

成果を重視しつつも、能力や行動なども評価項目に取り入れ、複合的に評価できるようにしたいと考えています。定量的な評価がしづらい業務もあるなかで、オープン&フラットな組織をめざす上では、それを普段から体現できているかを評価していくことも必要です。

まだ検討段階ではありますが、定性的な部分をフラットに評価できるよう、360度評価や顧客満足度評価なども取り入れ、ユーザーに目を向けたサービス提供ができる体制を作りたいと考えています。

キャリアパスに関しても、民間企業を基準に考えています。半期ごとに評価を行い、1年ごとに評価に基づいた昇給・昇格も行っていきますが、パフォーマンス次第では、一足飛びに昇給・昇格もあり得る、弾力性のある制度にしていく予定です。

任期は最大5年ですが、1年ごとに契約更新があるため、健全な緊張感を楽しみながら仕事に取り組めるのではないかと思います。

官民を自由に行き来できるキャリアを当たり前の選択肢にしたい

──「民間でもあるけれど行政でもある」という新しい組織となりますが、10年先、20年先を見据えて、GovTech東京をどんな組織にしていきたいですか?

行政は「絶対になくなってはいけない」ものですから、持続的、安定的にサービスを提供できるようにすることが至上命題です。われわれは、その行政と深く連携していく団体なので、GovTech東京においては「組織のサステナビリティ」が非常に重要だと考えています。

任期付きの職員もいる中、ある一定の流動性がある組織ということも踏まえれば、持続的に優秀なデジタル人材を確保し、育成していくことが求められます。再現性をもってこれらを行える仕組みを構築していくことが、私の役割です。

さらには、官民を自由に行き来できるキャリアが当たり前の選択肢になるよう、リボルビングドア(回転ドア)となることをめざしたいですね。

GovTech東京でキャリアを積んだ人が、その知見を活かして民間企業の要職に就いたり、区市町村のCIOとしてDX推進を担ったり、さらには、活躍のフィールドを全国の各自治体に広げたり。GovTech東京が、行政のDXにおける“人材輩出組織”になることが、私のひそかな野望です。

──GovTech東京ができることで、行政と民間の大きな壁がなくなり、人材が循環するということですね。

そういう世界ができると、新しい大きなエコシステムが生まれると思うんです。いまは民間企業の中で人材が循環していますが、それと同じことを行政と民間の間でもできるようになるといいですよね。

官民両方の経験を持った人材という、大きな資産を残すことができるはずです。

──ありがとうございます。最後に、GovTech東京に参画したいと考えている方たちに、メッセージをお願いします。

私はこれまで、社会を変えるためには、政治家や公務員になるしかないと思っていました。もちろん、彼らでしかできないことはあります。でも、GovTech東京ができたことで、自分たちが日々享受しているインフラやサービスの質を、自分たちの手でより良く変えられる、「こうなったらいいな」をカタチにできるチャンスが生まれたと思っています。

GovTech東京にとって2023年は団体設立元年ですから、未整備な部分も多い中でのスタートです。型ができるまでは試行錯誤しながら進めることも多いかとは思いますが、コアメンバーとして新たなDXの形、新たなエコシステムを作っていくことに関わる経験は唯一無二であり、やり遂げた先にはきっと、まだ見ぬ新しい景色を見られるはずです。

決して簡単なチャレンジではないですが、同じ船に乗って、未知なる航海を楽しめる仲間を求めています。


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