「ガバメントクラウド」の最新課題、移行における検討ポイントとは?
GovTech東京は、「東京都庁」と「都内62区市町村」のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を加速するために、都庁のデジタルサービス局と協働する組織として2023年に設立されました。「デジタルの力で 住民一人一人の生活を豊かに、そして幸せに」というミッションの実現に向けて、行政分野のデジタルサービス開発や、技術支援を担う専門家集団です。
今回は、都内の区市町村職員向けにGovTech東京が2日間にわたって開催した「ガバメントクラウド※」に関する勉強会について紹介します。標準準拠システムへの移行は2025年度末までという目標があることから、その準備のためにガバメントクラウドの最新課題や移行における検討ポイントをお伝えし、参考にしていただくことを目的としました。
※ガバメントクラウドとはデジタル庁が整備するパブリッククラウド基盤のことで、全国の地方自治体が使うシステムの一部を移行する標準準拠システムにおいて原則ガバメントクラウドを活用する方針を国が定めています
最新の課題・移行ステップのキホンをおさえる 「ガバメントクラウド移行のポイントとは?」
本勉強会は、2日間で対面+オンラインのハイブリット形式で実施し、各自治体の情報技術部門の担当者を中心に約30名が参加しました。本テーマに精通されている中島 淳之介氏が講師を担当しました。
Day1は講義編としてガバメントクラウドの全体像から課題について把握し、Day2は実践編として各参加者が自身で構成図を書きながら移行にあたってのポイントを学習しました。
カリキュラム
Day1「ガバメントクラウドにおける課題の全体像をつかむ」
Day1では主にガバメントクラウドにおける課題の全体像を講義形式で学んでもらいました。
ガバメントクラウドにおける課題として、下記のようなものがあげられます。
ガバメントクラウドにおける課題
複数ベンダーと契約している自治体も少なくなくステークホルダーが複数あることでの調整の難しさ
ガバメントクラウドを利用する標準20業務以外の事務もあることから、一箇所にあったシステムも複数箇所になって、運用・ネットワーク等が複雑化する可能性
コスト面に関しても、自治体のシステム特性は静的な部分もあり、買い切りの場合と比較して削減効果が出るかどうかが不透明な状態
市民データという重要データを扱う中で、海外ではデータ主権を自国で確保するためにどうするかという動きがある状況
その他にも、技術・運用・コスト面といった数々の課題があります。そうした中で「各自治体が“何を重視するか”を考えて、各ステークホルダーと連携してコミュニケーションを取りながら行動していくことが大事」というメッセージでDay1を締め括りました。
参加者からは積極的に質問をもらい、質問にはリアルタイムで回答しました。「今後庁内等への説明に向けて課題が整理できた」「これまで意識しきれなかったデータ主権について参考になった」といった前向きな声がありました。
Day2の内容「ガバメントクラウド移行のイメージを具体化するための実戦形式のワークショップ」
Day2は、参加者がガバメントクラウド移行のイメージを具体化することを目的に、実践形式で実施。まずは参加者の皆さんがそれぞれ所属する自治体のガバメントクラウドの構成図を書くところからスタートしました。
書いた構成図をベースに、ガバメントクラウド移行の検討ポイントを整理しました。
ガバメントクラウド移行時の検討ポイント 例
情報収集におけるASPベンダーに確認する項目リスト
データ連携方式の違い
接続回線やクラウド内ネットワーク構成の選択による違い
クラウド利用における単独利用方式と共同利用方式の違い
非機能要件として許容可能なダウンタイムの考え方
運用における目標管理指標のダッシュボードによる可視化
運用管理の定義および役割分担
最後には、ランニングコストについては、今後のコスト増の回避策がどこまであるかを確認した上でどのように見積もるかも検討しました。参加者からは、「運用管理のあるべき役割分担を考えることができた」「ランニングコストの問題や考え方を整理できた」という声もあがりました。
今後に向けて
実施後のアンケートでは、
「役立ち度、満足度ともに5点満点で平均約4.5点」
「回答者全員が今後ガバメントクラウドについて研修/セミナーの継続参加を希望」という結果となり、本テーマへの高いニーズを実感しました。
今回の結果を踏まえ、GovTech東京では今後も自治体への支援を行ってまいります。
本会については、東京デジタルアカデミーポータルサイトにアーカイブ動画を掲載しましたので、本記事と併せてぜひご覧ください。
※上記ポータルにログイン可能な東京都および都内区市町村職員の方のみ視聴可能となります
【Day1】
【Day2】