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データの見える化で事業改善!PDCAサイクルを回すために

GovTech東京は、東京都庁と都内62区市町村のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するために2023年に設立されました。
東京都は行政サービスの質を高め、住民の暮らしの質を向上することを目指しており都政のクオリティ向上を目標に、都庁各局をはじめ都と連携する政策連携団体への技術支援を行っているのが都政DXグループです。

GovTech東京が取り組むサービス

都政DXグループでは、東京都で実施している企画などの上流工程の支援や要件定義、プロジェクトの進捗管理を通じて、事業の成功に向けて強力にサポートをしています。日々の業務の中から見えてきた行政サービスの品質向上につながるノウハウやアイディアをnoteにて、連載形式でご紹介しています!
GovTech東京 都政DXグループの役割や目指す姿などについては、こちらの記事もご確認ください。

連載6本目は、データの見える化と事業改善をテーマに展開していきます。


自己紹介

都政DXグループ 小林淳也
電機、半導体、自動車メーカーで企画・R&D・DX・データサイエンス等に従事した後都庁へ。2024年4月からGovTech東京に転籍。休日は子供と遊んだり庭いじりしたりしています。働きながらPh.D取得を目指しており、もっと時間がほしい、1日30時間位あればいいのにと思っています。

読んでほしい人

  • データを使った業務改善や政策立案ってどうするの?と思っている人

  • 忙しくて事業を振り返る余裕などないよ!と思っている人

東京都のデータ利用

東京都は、従来都市運営の色々な場面でデータを活用しています。
下記に挙げる例はほんの一部です:

・河川水位を常時監視し災害の未然防止や避難指示の際の指標にする

・地域住民がVRモデルを操作しながらまちづくりを議論し、実際に作って確かめてみる(東京都作成の精密な測量データを使用している)(*1)

・窓口にアンケート用QRコードを設置し、スマホから直接、行政サービスや職員に対する評価を送ることを可能にし、都民の声が素早く業務改善につながるようにする(*2)

(*1) 西新宿で「スマートシティフェスタ」を開催しましたデジタルサービス推進部(東京都公式)
(*2) 進捗状況(2023年4~6月):サービスデザイン徹底プロジェクト – シン・トセイ
出典に掲載の画像をもとに筆者作成

上記のほかにも東京都は、事業運営に必要なデータを取得し、保有・活用しており、その種類や量は膨大なものになります。これらを今日よりも更に、都政に有効活用することが期待されています。

客観的証拠に基づき、政策を決定する

期待されるデータの利用目的の一つが、政策決定が客観的証拠に基づくことを意味するEBPM(Evidence Based Policy Making)です。
近年、行政データ量の増加、大規模データ分析手法の進化(ディープラーニング、生成AI等)によりデータからの課題抽出が格段に効率化したこと、日本においては2016年の官民データ活用推進基本法の制定が導入を後押ししました。従来どちらかというと勘と経験だけ、あるいは限定的な調査に頼らざるを得なかった領域においても試行が進んでいます。

例えば、ある行政サービスはマイナンバーカードを使った申請と紙による申請が可能であるとします。申請システムからのリアルタイムデータをみると、利用者数自体は伸びている。同時に紙の申請がマイナンバーカードよりも多い。マイナンバーカードを使った申請の方が手続き的には簡単で、選ぶ人が多いように思えますが、何故そうならないのでしょうか?
データを深堀りしてみると、新生児を持つ保護者からの申請が際立って紙の割合が多いことがわかりました。この特徴的なデータは何を意味するでしょうか?

生まれたばかりの子供はマイナンバーカードを持っておらず、その一方で保護者は子供の為にいち早く申請を行いたいと考える。結果として、不便があったとしても紙を選択する人が多くなります。
この仮説から、例えば「生まれた子にいち早くカードを交付する」「早期のカード作成を奨励する」といった政策が案出される(これは人の役割)と思いますが、データ分析結果はその後の議論において政策案に説得力を与え、担当者は自信をもって主張し、意思決定者もまた自信をもって判断できます。このアプローチこそがデータに基づく政策決定と言うわけです。

データの見える化

次いで、情報が人に理解されるためには例えばグラフや表など、見てわかる形で表現することが必要です。 これら一連のプロセスを「見える化」といい、データを用いた課題の見える化の基本となります。
見える化プロセスの一連の作業を効率的にするため、多種多様なITツールが存在します。どれもが基本機能として大量のデータの読み込みやクレンジング(データ欠損や表記揺れなどを補完する)、統計処理、グラフや地図等のビジュアルの生成が簡単に行えるようになっています。

更に、データの種類や値の範囲、注目点等を変化させるとすぐにビジュアルが更新されるインタラクティブ性を有しており、試行錯誤しながら注目すべきデータやデータの見せ方の検討を進めることが容易にできるようになっています。 このようなツールは「BI(Business Intelligence)ツール」と呼ばれます。「Power BI」「Tableau」等の有名製品があります。
グラフを描くだけならExcelでもできますが、インタラクティブ性が無く、上述の申請サービス事例のようにデータを深堀りして未知の課題を試行錯誤的に解明したい場合には不向きです。

Power BIのダッシュボード作成画面

データの見える化を活用した事業改善

行政におけるデータの見える化、データを用いた業務改善の実際はどのようなものでしょうか。
シン・トセイ(都政の構造改革ポータルサイト)を見ると、さまざまな改革プロジェクトが紹介されています。詳しくはリンクをご覧いただくとして、「このサイトについて」には次のように書かれています。

私たちはこのサイトを通じて、改革の進捗状況などを皆様へお届け【見える化】するとともに、いただいたご意見・ご感想を取組に反映【デザイン思考】させ、環境やニーズの変化に機敏に対応【アジャイル】しながら、QOS(Quality of Service)向上に向けた改革を進めていきます。

引用:シン・トセイ(都政の構造改革ポータルサイト)

状況を見える化する→意見が集まる→取組みに反映する、というように、見える化を原動力とした改善サイクルであることがわかります。そして繰り返すことにより将来変化への対応力を生み出しています。サイトは定期的に更新されるので、改善のスピード感も一目でわかります。

各プロジェクトの中身を見てみましょう。それぞれにつき概要、方針、計画等と共にいくつかの指標値が示されています。

例えば「窓口ユーザーレビュー」プロジェクトでは窓口の満足度(5段階評価)の全体平均を指標としています。
これを見たら、関係者はもちろん、もしかすると直接関係ない人でも、現在は3.9で道半ばだけど、なぜだ?と考え、5に持っていくために理由を調べたり、どうすべきか議論しなくては、と思いますよね。
このような目標の達成状況を端的に表す、言わば「見たらわかる」指標はKPI(Key Performance Indicator, 重要業績評価指標)と呼ばれます。

事業KPI(重要業績評価指標)の例

KPI算出までの業務の進め方についても少しお話ししましょう。
シン・トセイ重点項目①に選定されている「手続デジタル化」は、全庁あわせて約29,000の行政手続のすべてをデジタル化するプロジェクトです。
KPIはデジタル化済みの手続数(割合)です。令和6年12月末現在の進捗は82%ですが、デジタルサービス局の指揮の元、令和8年度の100%達成に向けて邁進しています。詳しくはこちらをご覧ください。

リンク:行政手続デジタル化ダッシュボード|行政手続デジタル化|東京都デジタルサービス局

行政手続のデジタル化と一口に言っても、3万件近くある手続はそれぞれの特徴や状況があり、デジタル化に向けたアプローチは同じではありません。そこで個別の分析や進捗管理が必要になってきます。
各局は四半期ごとに各手続の進捗、新規手続の追加、廃止手続の削除などを行い情報を更新します。上がってくるデータには手続の詳細情報が記されており、統合するとそこそこ大きなテーブルになります。そこで上述のBIツールを用いてデータ分析用ダッシュボードを作成し、庁内に提供しています。全ての局が同じ情報、同じ画面を使い様々な分析を行っています。

また、ダッシュボードはコミュニケーションツールとしての役割も担っています。庁内はもちろんのこと、「シン・トセイ」サイト上で公開を行い、施策の透明性を高めています。公開ダッシュボードは誰でも閲覧が可能で、デジタル化進捗率の最新値を確認したり、データの深堀りができるようになっています。

なお、手続デジタル化の評価軸は2つあり、一つはデジタル化された手続きの数、もう一つはサービス品質です。ネットで手続きできるだけで使いにくいものは、よしとされないということです。詳細は省きますが、サービスの品質については「よりシンプルに」「より早く」「より使いやすく」のKPIを用いて手続数と同様に改善サイクルを回しています。

今後の展望

データは通常、特定事業に閉じた目的で取得される場合が多いため、単独利用に留まる場合が多くなります。事業の垣根を越えてデータを共有することができれば、データを複数組み合わせて使うことにより新たな知見を引き出し、よりよい都政に反映させることができます。

実は東京都では多くの事業データが続々とオープンデータとして公開されており、誰もが様々なデータを単独で用いることはもちろん、自由に組み合わせて分析を行うことができる状況になっています。どのようなデータがあるかぜひ一度ご覧いただき、BIツールなどを活用してあなたの課題解決に取り入れてみてください。

参考:東京都オープンデータカタログサイトhttps://portal.data.metro.tokyo.lg.jp/


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